お金のこと諸々

キャリアチェンジを考え始めたら|教育訓練給付金の活用

30代は何かと揺れるお年頃です。

今の仕事や家庭が順調でも「これって適職なの?」「このままでいいのかな?」なんて、ふと考えてしまうこともありますよね。

何が転機になるかはわかりませんが、転職やスキルアップに活用できる公的な制度は知っておいて損はありません。

会社員としてお勤め中(または退職して1年以内)だったり、失業給付を受けている方が利用できる「教育給付金制度」についてまとめました。

教育訓練給付金制度とは

教育訓練給付金は、雇用保険に加入している人(離職後1年以内の人を含む)が利用できるキャリアアップのための給付金です。

お勤めしている人が加入する「雇用保険」から支給されますので、学生や自営業、雇用保険に加入していない場合は対象になりません。

たとえば、お勤めをしていても、週20時間未満の短時間勤務や、複数の職場で働いていて合算すれば週20時間以上になるのに雇用保険に加入できていない方は、今のところ対象外となってしまいます。

※ 今後は、働き方にかかわらず教育給付金が利用できるように、現在検討が進んでいます。

給付の条件

教育訓練給付金を受けるには、雇用保険の加入期間などの条件があります。

  • 受講開始時点で、雇用保険に加入している(または)
  • 離職してから1年以内(または)
  • 妊娠、出産、育児、疾病などで適用対象期間の延長を行った方は、20年以内

上記のどれかに該当する方で

  • 雇用保険の加入期間が1年以上ある(または)
  • 以前受講したことがある場合は、前回の受講開始日以降、新たに3年以上雇用保険に加入している

また、給付の対象にならない費用もありますので、確認しておきましょう。

  • 検定試験の受験料、補講費用、訓練施設での行事参加費用、受講のための交通費、PC購入費用などは給付対象費用になりません。
  • 割引制度などが適用された場合は、割引後の額が給付対象費用となります。

3つの教育訓練

対象となる教育訓練は、資格のレベルなどに応じて3種類あり、それぞれ給付される額が異なります。

どんな講座を受けられるかは、厚生労働省の「教育訓練講座検索システム」から検索することができます。

一般教育訓練

対象講座を受講した後、ハローワークで申請すると、受講費用の20%(上限年間10万円)が支給されます。

対象者雇用保険に加入中(または)
退職して1年以内*
雇用保険の
加入期間
受講開始時点で3年以上
初めて受講する人は1年以上
支給額入学金・授業料の20%
(上限10万円)

* 適用期間の延長を行った場合は、20年以内

簿記、Web系の認定試験、語学系の検定、土木・建築系の技士試験などが対象で、通学・通信どちらでも可、夜間や土日に受講できる講座もあります。

特定一般教育訓練

デジタル関係や業務独占資格(その資格がないと仕事ができないもの)などを目指す、比較的新しい制度です。(令和1年10月に新設)

一般教育訓練と比べて、2倍の給付を受けることができます。

受講前に、ハローワークで一定の手続き(訓練前キャリアコンサルティング、受給資格確認)が必要ですので、計画的に手続きを進めましょう。

対象講座を受講した後、ハローワークで申請すると、受講費用の40%(上限年間20万円)が支給されます。

対象者雇用保険に加入中(または)
退職して1年以内*
雇用保険の
加入期間
受講開始時点で3年以上
初めて受講する人は1年以上
支給額入学金・授業料の40%
(上限20万円)

* 適用期間の延長を行った場合は、20年以内

税理士、社会保険労務士などの専門資格、介護系の研修、機械運転の免許取得など、約150の講座があります。

専門実践教育訓練

受講にかかった教育訓練経費に加えて、修了後に雇用された場合にも給付金を受け取ることができます。

訓練受講中は6ヶ月ごとに申請を行い、支払った費用の50%(年間上限あり)が支給されます。

さらに、目標とする資格等を取得し、受講後1年以内に雇用された場合は追加給付を受けることができます。

対象者雇用保険に加入中(または)
退職して1年以内*
雇用保険の
加入期間
受講開始時点で3年以上
初めて受講する人は2年以上
支給額*・受講中は費用の50%
(年間上限40万円)

・修了後1年以内に雇用
→ +20%
(年間上限56万円

・最長4年

* 適用期間の延長を行った場合は、20年以内

訓練の対象となる講座は1年~4年と比較的長期にわたり、看護師、助産師、介護福祉士、美容師、理容師、調理師、保育士、歯科衛生士、栄養士、社会福祉士など、かなり専門的な資格取得を目指します。

失業中の「支援給付金」

専門実践教育訓練を受ける方で、かつ失業している場合は、訓練中の生活費を補うために「教育訓練支援給付金」が支給されます。

要件は以下のとおり。すべて満たす必要があります。

  • 失業中であること
  • 退職して1年以内
  • 訓練開始時点で45才未満
  • 会社役員、自治体の長に就任していない
  • 昼間通学制の訓練を受講(通信・夜間でないこと)
  • 教育訓練給付金を受けたことがない

支援給付金の額

教育訓練支援給付金は、失業中に受けていた基本手当、いわゆる失業保険の80%が支給されます。

まず、失業保険の給付額は、ざっと以下とおり計算できます。

「退職する6ヶ月前の賃金÷180」の80~45%
(勤務年数によって異なる)

たとえば、退職前半年間の平均給与が20万円の場合は月額13~14万円ほど、平均給与が30万円程度の場合は月額16~17万円ほどが失業保険のおおまかな目安になります。

支援給付金は、さらにその8割程度で、失業保険をもらい終わった後に支給されます。

支援給付金の受給期間

失業保険の給付金を受け取っている間は、教育訓練支援給付金は支給されません

自己都合退職の場合、ざっくり以下のようなスケジュールになります。

退職~3ヶ月給付なし
(失業保険の申請)
4ヶ月目以降失業保険の基本手当を受給
失業保険をもらい終わった後~訓練を修了するまで教育訓練支援給付金
(失業保険の80%)

また、支援給付金を受ける条件として、真面目に訓練を受講していることも重要で、こんな場合は支給されなくなってしまいます。

  • 欠席が多く、2ヶ月の出席率が8割未満になった場合
  • 成績不良や休学で、決められた訓練期間中に修了できそうにない
  • 受講を途中でやめてしまった

資格や金額はハローワークで事前照会ができますが、電話では受付けてもらえません。

給付の手続き

詳しい給付条件や手続きは、ハローワークで確認することができます。

特定一般訓練または専門実践訓練を受ける場合に必要なキャリアコンサルティングは、全国の「キャリア形成・学び直し支援センター」でも受けることができます。(対面、オンラインどちらでも可)

手厚い給付金を受けられる「専門的な学び直し」は、手続きにも時間がかかりますので、計画的に進めるようにしたいですね。