マクロ経済スライドとは? 年金ルールを知って将来に備えよう
この記事は2026年9月時点の情報をもとにまとめたものです。
日々の買い物からエネルギー費用まで、物価の重みをずっしり感じる日々が続いています。
その影響は、老後の暮らしを支える年金額にも及んでいるのですが、「今年は年金額が2%増えました」なんて聞いても、正直ピンとこないですよね。
年金額は、物価や賃金がそのまま反映されているわけではなく、間に「マクロ経済スライド」というワンクッションが挟まっています。
あなたの年金の「いくら」を決めているこのしくみを整理してみたので、のぞいてみてください。
今年度の年金額
2026年(令和8年)4月から、シニアの皆さまが受け取る老齢年金額は、前年と比べて、国民年金は1.9%、厚生年金は2.0%の引き上げとなりました。
| 国民年金(満額) | 月額 70,608円 (前年比 +1300円) |
| 厚生年金(例) | 月額 237,279円 (前年比 +4495円) |
- 国民年金は、1人分の満額です。
- 厚生年金は、平均的な収入で(ボーナスを含む月額換算で45.5万円)、40年間加入した場合に受け取る年金額で、厚生年金と夫婦2人分の基礎年金の合計額です。
今年度の国民年金保険料
現役世代が支払う保険料(国民年金保険料)は、平成16年から毎年少しずつ引き上げられてきましたが、平成29年度に上限(16,900円)に達し、引き上げが完了しました。
その上で、平成31年から自営業の方などに対しても産前産後の保険料免除制度が導入されたため、その分保険料が月額100円引き上がり、17,000円となりました。
ただし、17,000円は「土台となる基準額」で、そこに毎年の賃金変動に応じた保険料改定率をかけて、実際の金額が決まります。
令和8年度の国民年金保険料は、月額17,920円です。
| 国民年金保険 | 令和7年度 | 令和8年度 |
|---|---|---|
| 支払う保険料 | 月額 17,510円 | 月額 17,920円 |
| 前年度比較 | +530円 | +410円 |

マクロ経済スライドってなに?
国の年金制度は、物価が上がったら、年金額もそれに応じて上昇するしくみになっています。
年金で暮らしている人が、うんと長生きをしたら「物価が上がって生活できない」とならないように、その時の物価や賃金上昇に合わせて、年金額自体を変動させるしくみですね。
また、国の年金は、現役世代が支払う保険料で高齢者に給付する年金をまかなう、子世代から親世代への仕送り方式です。
自分で貯めて自分で受け取る積立方式ではないので、全体のバランスをとるための調整が必要になるのですが、そのあたりをたとえ話でイメージしてみましょう。
たとえば、人々が大きなグループになって、「みんなの共有のお財布」という制度を設けたとしましょう。
この制度では、グループの若いメンバー(現役世代)が少しずつお金を共有財布に入れていき、その貯金が高齢のメンバーへの支援金として使われます。
高齢者は、年齢を重ねるごとに、毎年この財布から支援金を受け取ることができる仕組みですね。

ただ、この制度の参加者は、年によって増えたり減ったりします。
参加者が増えていけば良いのですが、子どもたちが少なく、大人が多いと(少子高齢化)、財布のお金が全然足りなくなる問題が起きてしまいます。
そこで、その年ごとの経済状況や参加者の人数の変化に応じて、支援金の量を自動的に調整するルールが設けられました。
参加者が少なくなって、みんなの財布の貯金が不足している時には、高齢者が受け取る支援金の増加率を抑えることで、貯金が枯渇するのを防ぎます。
これによって、共通のお財布制度が長く継続し、参加者がなるべく公平にお金を受けとることが可能になります。
これが「マクロ経済スライド」と呼ばれるしくみで、将来の年金給付を確保するための調整の役割を担っています。
スライド調整率の決まり方
マクロ経済スライドで、どのくらい支援金(年金額)の伸びを抑えるかは、次の式で決まります。
スライド調整率 = ①現役世代の減少率 + ②平均余命の伸び率
- 公的年金加入者数の変動(過去3年の平均)
- 毎年0.3%で固定
賃金・物価の上昇率が大きい時は、改定率からこのスライド調整率がそのまま差し引かれます。
反対に、賃金・物価の上昇率が小さく、調整すると年金額がマイナスになってしまう場合は、調整はそこで止められ、年金額の改定自体が行われません。(据え置き)

このとき使いきれなかった調整分は消えてなくなるわけではなく、次に景気が良い年が来た時にまとめて差し引かれます。(未調整分の繰り越し、次章にまとめました)
未調整分の繰り越しとは
現役世代の負担能力を重視するとはいえ、今の高齢世代にも配慮が必要なので、「前年よりも年金額を下げない」というルールがあります。
そのため、景気が良くない年にマクロ経済スライドを実施しようとしても、年金額が前年を下回ってしまう場合は調整をしきれず、その分を翌年以降に繰り越すことになります。
たとえば2023年度(令和5年度)は、その年のスライド調整率(0.3%)に加えて、過去2回分の未調整分(0.3%)も一緒に差し引かれ、合計0.6%のマイナス調整となりました。
景気が良い時にまとめて調整される分、目減りが大きく感じられる年もある、というわけです。
なお、直近の令和8年度は繰り越された未調整分がなく、その年分の調整率のみが反映されています。
年金額の改定ルール
受け取る年金額は、物価や賃金の変動に応じて毎年見直されます。
すでに年金を受け取っている人:
前年度改定率 × 物価変動率 × マクロ経済スライド調整率
これから年金を受け取り始める人:
前年度改定率 × 賃金変動率 × マクロ経済スライド調整率
※ 正式には前者を「既裁定者」、後者を「新規裁定者」といい、68歳に到達した年度が境目になります。
また、年金制度は若い世代からシニア世代への「仕送り」のため、現役世代の負担能力(賃金の上がり具合)が物価に追いつかない場合は、すでに受け取っている人の年金も、物価ではなく賃金変動に合わせて改定されます。
つまり、物価変動率と賃金変動率のうち「低い方が使われる」とイメージしておくとわかりやすいと思います。
年金、これからどうなる?
将来、年金はいくらもらえるんだろう? 大丈夫なのか、年金?!
あなたもこんな不安を感じているのではないでしょうか。
実際に、お話を伺ったお客様のほとんどが「心配です」とおっしゃっています。
では、年金はなくなってしまうか?というと、今よりはお財布が小さくなるとしても、生活を支える柱であり続ける可能性が高いと私自身は思っています。
なので、お客様のライフプランを作成する時も、老後はこれからも公的年金を受け取ることを前提に試算を行っています。
悲観しすぎて今の生活が窮屈になってしまうよりも、この制度を一定信頼してアテにしつつ、淡々と資産形成を続けることが最適解かなと考えているためです。
年金を受け取るのが数十年先の若い世代には、年金の目減りに負けないように、自助努力で今から資産形成ができる「時間」があります。
一つ気をつけたいのは、儲かりまっせの投資話や、「年金に頼らず、保険に加入して自分を守りましょう」といったお誘いに簡単に乗らないこと。
資産形成の商品選びを間違えると、せっかくの時間を無駄に費やすことにもなりかねません。そこはくれぐれもご注意を。
70歳だってまだまだ若い、働ける!とされる時代です。
「現役世代」にカウントされる時間は今よりもだいぶ長くなりそう、と心の準備をして(できれば体も鍛えて)おくのが良いと思います!

