公的制度・税金

副業・かけもちパートで押さえておきたい社会保険と扶養の要件

パートの年収が一定水準を超えると、税金や社会保険料の負担が発生し、手取り収入が減ることがあります。

特に「106万円」と「130万円」を超えると保険料の負担が大きくなる社会保険の壁は、副業やダブルワークをする際、気になるところかと思います。

パートをかけもちする際、どのようなケースで社会保険の加入対象になるのか、家族の扶養に入れるのか等についてまとめました。

自分で「社会保険」に加入する

まずは、自分自身で社会保険に加入する場合をみていきましょう。

社会保険(厚生年金、健康保険)に加入するには、一定の要件を満たす必要がありますが、近年、この要件は拡大傾向にあり、パート勤務でも加入対象となる人が増えています。

以下のどちらかに該当する場合は、自分でパート先の社会保険に加入することになります。

正社員の4分の3以上働く場合

通常の従業員の4分の3(所定労働時間が週40時間の場合には週30時間)以上働く場合は、社会保険に加入しなければなりません。

1日6時間×週5日など、フルタイムに近い働き方が該当します。

短時間勤務の場合

短時間勤務で、4分の3基準を満たさない場合であっても、以下の要件すべてを満たす場合は、社会保険に加入することになります。

  1. 勤務先の従業員が101人以上である(2024年10月からは従業員51名以上の会社が対象になります)
  2. 20時間以上働く
  3. 88,000円(年換算で約106万円)以上の給与
  4. 2ヶ月以上雇用される見込みがある
  5. 学生ではない

判断基準となる月額賃金には残業代、賞与、結婚手当等の臨時的な手当、交通費等は含まれません

106万円以上でも扶養内の場合

勤務先の会社が従業員101人以上で、パート収入が106万円を超えていても、高めの時給で短時間だけ働くような場合、家族の扶養内に留まることができます。

たとえば、時給1500円で週16時間(4時間×週4日)勤務すると

1500円×16時間×52週→年収124万円


となります。(年収だけみると106万円超)

社会保険に加入するには、要件をすべて満たす必要がありますが、この場合、加入要件のうち労働時間要件(週20時間以上)を満たさないため、社会保険の対象になりません。

複数の会社でかけ持ちで働く場合

パートをかけ持ちし、A社とB社の2ヶ所で働く場合、それぞれの会社ごとに社会保険の加入要件を確認します。

たとえば、2つの勤務先でそれぞれ週10時間ずつ勤務するような場合、2ヶ所の合計では週20時間になっても、1社ごとでは要件を満たさないため、社会保険の加入対象にはなりません

一方で、どちらも加入要件を満たす時は、A社・B社の両方で社会保険に加入することになります。

社会保険料は、それぞれの会社から受け取る給与を合算した金額に基づいて決められます。

決められた保険料は、それぞれの会社の給与額に基づいて按分して支払います。

家族の「扶養」に入る

パート先の社会保険加入要件を満たさない場合は、会社員の家族の扶養になる要件を確認しましょう。

健康保険に加入する家族がいる場合、その家族の被扶養者(扶養される人)になるためには収入基準があります。

今後1年間の年収見込額が以下の範囲内におさまる場合、被扶養者として家族の健康保険に加入することができ、保険料の負担もありません

扶養される人の年齢等年収見込額
60歳未満130万円未満
月収の目安:108,334円未満
60歳以上
または
障害年金受給者
180万円未満
月収の目安:150,000円未満

この場合の収入は、残業代、交通費、各種手当をすべて含む総収入ベースになります。

勤務先が複数ある場合は、すべての収入を合算した金額で判断します。

130万円の収入確認方法や、扶養として認めるかどうかの最終判断は、会社の健康保険組合によって異なります。

「年収の壁」の特例措置

2023年10月から、「年収の壁・支援強化パッケージ」の運用が始まりました。

これにより、被扶養者が年収130万円を超えて働いても、繁忙期や欠員のピンチヒッターなどで「一時的な収入増である」という事業主の証明があれば、扶養のままでいることも可能になりました。

  • この場合、130万円を超えた増加部分の上限額は設けられていません。
  • 複数の勤務先で働く場合も、この措置の対象になります。

一方で、基本給が上がった等の理由で、今後継続して130万円を超えると判断される場合は扶養内と認められない可能性があります。
※ 最終的な判断は健康保険組合が行います。

また、年収106万円の壁を超えた場合は、社会保険料の支払いが発生しても、被扶養者の勤務先から手取り収入を減らさないための補てんが受けられる場合があります。
※ 補てんの有無は会社の判断によります。

この特例措置は2年間限定となり、2025年をめどに見直しが予定されています。

「年収の壁」がだんだん低くなり、今後はより多くの人が「保険料を納めて社会保険に加入する」大きな制度変更までのつなぎ措置ともいえそうです。

国保・国民年金に加入する

自分でパート先の社会保険に加入する、もしくは家族の扶養に入る、このどちらも満たさない場合は、自分で国民年金・国民健康保険に加入することになります。

たとえば以下のような場合です。

パターン①
勤務先A社
従業員数101人以上
勤務時間週18時間
時給1500円
年収1500円 × 18時間 × 52週 = 約140万円
社会保険×(週20時間未満)
家族の扶養×(年130万円超)
パターン②
勤務先A社・B社かけもち
従業員数どちらも101人以上
勤務時間A社で週15時間、B社で週10時間
時給1000円、1200円
年収/A社1200円 ×15時間 × 52週 = 約93万円
年収/B社1000円 ×10時間 × 52週 = 約52万円
社会保険×(A・Bそれぞれ週20時間未満)
家族の扶養×(A・Bの合計年収130万円超)
国民健康保険

自治体が運営する医療保険制度で、保険料は自治体によって異なります。

国民年金

20歳以上60歳未満のすべての人が加入する年金制度。国民年金保険料は収入に関わらず一律で、R6年度は月16,980円です。(毎年改定されます)

どちらも市町村の窓口で手続きが必要です。

この場合、保険料は会社と折半ではなく、全額自己負担になります。

厚生年金ではないため、将来の年金額の上乗せもありませんので、自助努力で少しずつ資産形成しておく必要がありそうです。

社会保険加入判定フロー

パート勤務をする場合、自分で社会保険に加入するか、家族の扶養に入るかを確認してみましょう。

まとめ

短時間勤務でも、一定規模以上の会社で週20時間以上、月88,000円以上の給与がある場合は社会保険に加入しなければなりません。

たとえ年収が130万円未満で扶養の範囲内であっても、パート先の加入要件を満たす場合は社会保険が優先されます。

家族の扶養に入るには基本的に年収130万円未満であることが条件ですが、一時的な収入増加であれば特例措置により扶養内にとどまることができます。

自分で社会保険に加入する場合と扶養に入る場合では判断基準が異なりますので、注意が必要です。