私、自他ともに認める「捨て魔」です。
モノがたくさんあると落ち着かず、リビングやテーブルに放置されたものはガンガン断捨離してしまうので、増えて困ることはないのですが、時々なくなって困っている家人がいます。
ちゃんと片付けないのがいけないと思うのですが、捨てるタイミングが早過ぎるというクレームも絶えません。
モノの扱い方や執着、価値観は家族といえども様々で、なかなか難しいところです。
さて、ここからは、勝手に断捨離してはいけない相続のお話です。
相続財産は一旦「みんなのもの」
家族が亡くなると、その人が持っていたものは相続財産として、配偶者や子ども、その他ご縁のある人に引き継がれることになります。
ただし、誰が・何を・どれくらいもらうかが決まるまでは、一旦相続人全員の共有財産とみなされます。
分け方が決まるまでは触るべからず。勝手に使ったり、処分したりしてしまうと後でトラブルになる可能性がありますので要注意です。
プラスの相続財産とは
プラスの相続財産には、亡くなった人が保有していた「お金に換えられる価値があるもの」すべてが含まれます。
- 預貯金
- 有価証券
- 不動産
- 車
- 書画や骨とう品
- 宝石・貴金属
- ゴルフ会員権
- 著作権や特許権 など
生命保険金は、原則として相続財産には含まれません。
ただし、相続税を算出する過程においては「みなし相続財産」としてプラスの財産に含まれることになります。
生命保険金には「500万円×法定相続人の数」という非課税枠があり、この枠を超えた金額のみ、財産の総額に加算されます。
マイナスの相続財産とは
まだ支払っていないお金等、相続財産にはマイナスの財産も存在します。
- 借入金
- 連帯保証債務
- 教育ローンや車のローン
- クレジットカードの未払金
- 生前に支払っていなかった税金や医療費 など
これらは、当人が亡くなったからといって、自動的に返済免除にはなりません。
相続したくない場合はどうする?
相続する人は、プラス財産もマイナス財産も、原則としてすべて引き継ぐことになります。
ただし、相続したくない場合には以下のように申告をし、「引き継がない」という選択をすることも可能です。
限定承認
限定承認とは、プラスの財産とマイナスの財産の両方があった場合に、プラスの財産の範囲内でマイナスの財産を弁済する方法です。
つまり、相続人が故人の負債をすべて背負うのではなく、できる限りの範囲で弁済をする方法ですね。
マイナスの財産 < プラスの財産
負債よりもプラスの財産の方が多ければ、弁済した後に残った分を相続する。
マイナスの財産 > プラスの財産
負債の方が多ければ、プラスの財産が弁済額の上限となり、それ以上の弁済はしない。
限定承認の手続き
限定承認を行うには、相続人全員が同意した上で、家庭裁判所に申し立てが必要です。
- 相続の開始を知った日から3ヶ月以内に、家庭裁判所に「限定承認申述書」を提出します。
- 必要な書類(被相続人の死亡証明書、相続人全員の同意書など)を揃えます。
- 家庭裁判所から審判を受け、限定承認が認められれば、負債の範囲内で弁済を行います。
限定承認は、法的には存在するものの、実際に利用される割合は非常に低く、全体の相続手続きのうち約1%未満と言われています。
限定承認が利用されにくい理由
- 手続きが面倒(書類の準備や家庭裁判所での手続きが煩雑なため、専門家のサポートが必要になることが多い)
- 相続人全員の同意が必要(相続人の中に一人でも反対の人がいると利用できない)
- 費用と時間がかかる
ただし、相続財産の中にどうしても手放したくない財産(自宅、不動産、事業資産など)が含まれているとか、負債がプラスの財産を超えるかどうか確定していない場合には、限定承認が有効なケースがあります。
相続放棄
プラスの財産もマイナスの財産も、何も相続しない方法です。
相続放棄をすると、その相続人は最初からいなかったものとみなされ、次の順位の人に相続権がまわっていきます。
たとえば、相続人が配偶者と子どもの場合。
子どもが相続放棄をすると、亡くなった人の親が相続人になります。
その親も相続放棄をすると、亡くなった人の兄弟姉妹が相続人になります。
放棄をすることで、本来は相続人ではなかった人に、新たに権利が生じるということですね。
相続放棄の期限
相続放棄は、相続の開始を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所に申述しなければなりません。
この期間内に手続きを行わないと、相続を承認したものとみなされてしまいます。
また、故人の預金を引き出す等、早々にプラスの財産に手をつけてしまった場合も、「マイナスも含めすべての財産を相続する」ことになってしまうので、注意が必要です。
限定承認との違い
限定承認とは異なり、相続放棄は個々の相続人が単独で行うことができます。
そのため、他の相続人と意見が合わない場合でも、自分の判断で放棄を選択することが可能です。
ただし、マイナスの財産がある場合、相続放棄を行うと新たな相続人に債務が回ることになりますので、慎重に判断する必要があります。
財産の内容はなるべくオープンに
分け方が決まるまでは、相続財産は基本みんなのものです。
できるだけスムーズに話し合い(遺産分割協議)をし、まずは分け方の確定を優先させましょう。
また、マイナスの財産は、相続をしてもしなくても、残された人の負担が大きくなります。
自分自身の財産は、元気なうちに、できる限り家族に内容を知らせておく等の対策をとっておきましょう。