数年前からNISA始めましたというお客様が増えています。
YouTubeなどで簡単に役立つ情報が手に入りますし、投資がますます身近になっていることを実感します。
住宅ローンについても情報があふれていますが、特に金利の低さと投資への関心が重なり「住宅ローンを最大限利用しながら、手元の現金を投資に回す」という考え方が注目されています。
住宅ローンと投資の関係についてまとめました。
住宅ローンは特別な低金利商品
マイホームという大きな買い物をする際、普通は一度に全額は支払えないので、銀行からお金を借りて少しずつ返済する住宅ローンを利用します。
住宅ローンは、他の借入よりも低い金利が設定されています。
- 購入する住宅を担保にすることで金融機関のリスクが低くなるため。
- 返済期間が長く設定され、金融機関は長期間安定した収入を得られる。借り手にとっても毎月返済額を抑えられるため確実に返済できる。(この安定感が金利の低さにつながる)
- 金融機関同士の競争が激しい。
かつては、家を買おう!と思ったらまずは頭金を貯めて、借入はなるべく少なく、短期間で返済し終えるのが主流の考え方でした。
住宅ローンはより多く・長く?
近頃は、低金利の住宅ローンを最大限利用して、他の資産形成を組み合わせる方法が注目されています。
手元の現金を、頭金や繰上返済に使ってしまわず、その分は投資に回すという考え方です。
頭金を減らして現金確保
従来は、頭金を多く入れて借入額を減らすのが一般的でしたが、最近では頭金ゼロとか、頭金を極力少なくし、手元に現金を多く残す方が有利といわれることがあります。
頭金として使うはずだった現金を投資信託や株式などに投資し、将来のリターンを期待する方法です。
住宅ローンの金利が低いため、その金利を支払い続けても、投資によるリターンの方が高く期待できるという考え方です。
オーバーローンについて
家を購入する時には、物件価格だけでなくさまざまな経費がかかります。
たとえば、自分の所有として登録するための費用や、住宅ローンにかかる諸費用、不動産会社への手数料などですね。
これら諸経費は自己資金で支払うのが従来のパターンですが、手元にまとまった現金がなくても家を買うことができるオーバーローンというしくみもあります。
オーバーローンとは、物件価格よりも多くのお金を借りることをいいます。
たとえば、物件価格が5000万円だとしたら、銀行から5500万円を借りて、余った500万円を諸経費などに充てる方法です。
ただ、当たり前ですが、借りたお金は返さなければなりません。
便利なしくみではありますが、その分返済の負担も増えますし、そもそも物件価格以上のお金を借りるってどうなんだろうと違和感があるなら、少し立ち止まって考えてみることが大切と思います。
繰上返済なしで投資を優先
住宅ローンの繰上返済は行わず、その分を投資に回すという方法です。
特に、団体信用生命保険の保障をキープしつつ、手元の現金を返済ではなく運用に回すことで、より高いリターンを目指す作戦です。
投資によるリターンが住宅ローンの金利を上回ることを前提に、たとえば住宅ローンの金利が1%であれば、年利3%を見込める投資信託などに現金を充てることで、繰上返済をしない方がお得になるという目論見です。
このように、住宅ローンと投資を組み合わせることで、効果的な資産形成を目指しましょう!といった情報、あなたも聞いたことがあるのではないでしょうか。
控えめなリターンほど難しい
ここ数年の市場を振り返ると、住宅ローンをたくさん借りて、手元の現金は投資信託などで運用したとすると、結果として、多くの人が利益を得ることができたはずです。
基本的に市場は上昇しており、コロナ禍で一時的に下落したもののすぐに回復し、その後はさらに上がって、日経平均はバブル期を超える4万円台に達しました。
だけど、これが今後も続くかどうかは誰にもわかりません。
長く運用を続けていると、その間に何度かは大きな下落を経験するはずで、これからも同じペースで上昇し続けるわけではない(そろそろかな?)と感じている方も多いでしょう。
特に投資を始めたばかりの人にとって、まだ経験したことのない最初の「谷」はいつ訪れてもおかしくありません。
その時に、お財布的にもメンタル的にも大丈夫なリスクコントロールはできているでしょうか。
株でがっつり儲けたい!といった肉食系投資スタイルではなく、できるだけ安全に、他よりも少しだけ有利にお金を増やしたい草食風を望む声は多いですが、投資の世界ではこれがまた難しく、悩ましいところです。
たとえば、安全重視であればローリスク・ローリターン商品の定期預金があげられますが、これではリターンが低すぎて「投資」というイメージと違うかもしれません。
だけど「定期預金よりも少し高いリターンを手堅く得たい」という控えめな希望ほど、実際には見つけることがすごく難しい幻の商品といえます。
投資の世界では一定のリスクはつきもので、ローリスク・ベターリターンのような特別な商品はそもそもないと考えるのが無難です。
多く借りて投資、の違和感
株には信用取引という方法があります。
信用取引とは、証券会社からお金を借りて株を買う方法です。
通常の取引では、投資家は手持ちの資金でしか株を購入できませんが、信用取引では手持ち資金以上の取引が可能になります。
お金を借りて手持ち以上の取引をすることで、大きな利益を得るチャンスが生まれるわけです。
ただ、同時に大きな損失を出すリスクもありますので、直感的に、こういうやり方は怖いな、とも感じるのではないでしょうか。
低金利の住宅ローン(借金)を活用して、資金はそれよりも利回りの高い投資に回すことは(理論的には)効率の良い資産形成ですが、借入を多くして運用に回すとなると、信用取引と同じようなリスクを伴います。
実際には、さまざまな要因で予定通りにはいかないこともあります。
その時に焦らなくてすむように、下がるリスクも意識しておきましょう。
長期の資産形成が、今後も重要な「お金を育てる方法」であることは間違いないと思うのですが、住宅ローンと投資を抱き合わせで考えるとなんとなく複雑に感じたり、判断の軸がブレるような気もします。
考えるのが面倒になると、他者からのひと声(住宅購入の場面なら売り手側の押しの一手など)が簡単に決め手になったりもしますよね。
住宅ローンは金額が大きな契約ですので、借入を増やしてまで投資をするかどうか、自分のリスク許容度に照らしてよくよく考える必要がありそうです。
余裕資金でリスクを最小限に
今後も市場が上昇し順調に増える前提で、その分をアテにした計画だと、下落した時に困ったことになりかねません。
もう聞き飽きたフレーズかもしれませんが、投資はやっぱり余裕資金で行うのが基本姿勢です。
「ローリスクだけどリターンはそこそこある」なんて特別な商品は存在しませんし、「実はあるんです、いいのが」といった甘いささやきは詐欺を疑いましょう。
住宅ローンと同時におすすめされる商品(積立型の保険など)にも要注意です。
まとめ
これがおススメ、投資の裏技!といった情報は、無料でいくらでも手に入る時代です。
住宅ローンを含む金融商品についても、ズバッと言い切る歯切れの良い情報はおもしろくてつい見入ってしまうことがありますが、個人的にはポジショントークも多い印象があります。
そのあたりは頭の中で割り引いて、少しだけ裏を考えてみるのも良いかもしれません。