公的な年金には、老後に受け取る老齢年金の他にも、とても重要な役割があります。
若い世代にも大いに関係のある、公的年金についてまとめました。
公的年金は「保険」です
年金というと真っ先に思い浮かぶのは、年をとってから、国からもらうお金ではないでしょうか。
老齢年金といって、原則65才から亡くなるまで、終身にわたって受給できるお金ですね。
年をとって働けなくなった後の生活を支えるお金ですから、どれくらいもらえるのか気になりますし、故に時々炎上したりします。
一方、あまり取り沙汰されることがないのですが、国の年金には、これ以外にもとても重要な役割があります。
一家の稼ぎ手が亡くなってしまった時や、ケガや病気で心身に障害をおった時にも、国の「年金」を受け取ることができるのです。
こういう事態は、若い人にとっても他人事ではありませんよね。
国の年金制度は「社会保険」の一つです。その役割は、名前のとおり「保険」。
起きてほしくはない出来事、リスクに備える保険なんですね。
公的年金3つのグループ
日本には、20才以上60才未満の人は全員、国の年金保険に加入するという決まりがあります。
加入者は、職業や立場によって3つのグループに分けられます。
どのグループに属するかによって、支払う保険料や、受け取る年金額が違ってきます。
- 会社員・公務員の人
- 会社員・公務員の配偶者で年収130万円以下の人
- 上の2つ以外の人すべて(自営業、学生、無職の場合など)
民間の生命保険などと同じく、公的年金も「保険」なので、保険料を納めなければなりません。
ちゃんと保険料を払わないと、これまた民間保険と同じように、保険金(=年金)を受け取る権利を失うことになってしまいます。
年金を受け取れる3つのケース
年金が支給される場面は、大きく3つに分けられます。
年金は保険ですから、以下の3つは「リスク」とも言えますね。
年をとった時
年をとって働けなくなった後、まだまだ元気なのに、貯金が底をついて生活するお金が足りなくなってしまったら?
せっかく長生きしても、これでは全然ハッピーではありませんよね。
お金の面からすると、予想以上に(自分が用意したお金以上に)長生きすることは、リスクと言えます。
だから、長生きに備えて、老後は亡くなるまで一定のお金を支給する老齢年金があるんですね。
老齢年金は、原則65才から受け取ることができますが、状況に応じて、受給開始を60才に前倒ししたり、70才くらいまで後ろに延ばしたりすることもできます。
一度開始した年金は、その人が亡くなるまで終身で支給されます。
一家の働き手が亡くなった時
一家の生活を支えていた人が亡くなると、残された遺族に遺族年金が支給されます。
特に、まだ子供も小さく、働き盛りの若いお父さんが亡くなってしまうようなケースでは、その後の生活を支える大事な収入の一つになりますね。
現役世代の万が一に備える、生命保険と同じ役割を果たします。
遺族のうちの「誰が・いくら年金を受け取るのか」は、亡くなった人がどのグループに属していたか(国民年金か厚生年金か)によって異なります。
病気やケガで障害をおった時
病気やケガで心身に障害をおった場合、その状態に応じて障害年金が支給されます。
障害によって生じた不自由な期間、経済面で補う役割もあるんですね。
障害年金は、働きながら受給することもできますが、多くの場合、一定期間ごとに更新の手続きも必要です。
ほとんどの障害年金は、初診日から1年6ヶ月を過ぎると申請できるようになります。(病院にかかってすぐに申請・受給できるものではありません。)
障害の原因となった病気やケガの初診時に、どのグループに属していたか (国民年金か厚生年金か) で、受け取る障害年金が決まります。
年金はどれくらいもらえるの?
自営業と会社員の2パターンで、何をどれくらいもらえるか、イメージで捉えてみましょう。(どちらも子供がいるものとします)
年をとった時
職業 | 老齢基礎年金 | 老齢厚生年金 |
---|---|---|
会社員 | 約80万円 | 報酬に比例 |
自営業 | 約80万円 | なし |
- 基礎年金は、20才から60才までの40年間すべて保険料を納めていれば満額(約80万円)、納めていない期間はその月数分を減額して支給されます。
- 基礎年金の金額は、情勢に応じて調整されるため、毎年変動します。
- 報酬比例とは、厚生年金に加入した期間と収入に応じて支給される金額です。
- 具体的な金額や要件等は、日本年金機構のHPで確認ができます。
一家の働き手が亡くなった時
職業 | 遺族基礎年金 | 遺族厚生年金 |
---|---|---|
自営業 | 約80万円+子の加算 | なし |
会社員 | 約80万円+子の加算 | 亡くなった人の報酬比例×4分の3 |
- 遺族基礎年金をもらえるのは「子がいる配偶者」または「子」に限られます。亡くなった人に「子」がいない場合は支給されません。
- 年金制度上の「子ども」は18才までと決められています。遺族基礎年金をもらえるのは、末子が18才になった年の年度末まで(障害のある子は20才まで)。
- 遺族厚生年金をもらえるのは、優先される順に①配偶者 ②子 ③父母 ④孫 ⑤祖父母です。先の順位の人がもらうと、それ以降の人には支給されません。
病気やケガで障害をおった時
状態 | 障害基礎年金 | 障害厚生年金 |
---|---|---|
1級 | 約80万円×1.25 +子の加算 | 報酬比例×1.25 +配偶者加算 |
2級 | 約80万円 +子の加算 | 報酬比例 +配偶者加算 |
3級 | なし | 報酬比例 |
障害手当金 | なし | 一時金 |
- 遺族年金と同じく「子ども」は18才まで。障害基礎年金の子の加算は、末子が18才になった年の年度末までです(障害のある子は20才まで)。
- 配偶者は夫でも妻でも可。どちらが扶養しているかは問わず、配偶者の要件(年齢や収入)を満たしていれば配偶者加算の対象になります。
「報酬比例」が具体的にいくらなのかは、毎年お誕生日の頃に届くねんきん定期便(圧着のハガキ)か、WEBのねんきんネットで確認することができます。
ねんきんネットは、最初のID発行がやや面倒ですが、一度登録するといつでも確認することができます。
年金をもらうための要件
公的年金は、加入者(私たち国民)が年金保険料を納めることで、すごく長生きをしたり、万が一の事態に備えることができる国の「保険」です。
国の制度で強制加入ですが、きちんと保険料を支払わないと、年金を受け取れなくなってしまいます。
保険料の支払いに関する条件は以下のとおり。
これを満たさないと、万が一のことが起きても、年金をもらことができません。
- 老齢年金
保険料を納付した期間が(免除等も併せて)10年以上あること。 - 遺族年金
死亡した月の前々月までの、保険料を納付するべき期間において、保険料を3分の2以上納めていること。 - 障害年金
初診日の前々月までの、保険料を納付するべき期間において、保険料を3分の2以上納めていること。
万が一が起きてから「あ、払っていなかったから、これから払います」はNGです。
自営業の方や転職経験がある場合は、手続きの狭間でうっかり納付漏れがあったり、いつどの制度に加入していたかはっきりわからないこともあるでしょう。
納付していなかった期間については、本来の納付期限から10年までは溯って後納することもできます。(何の手続きもしていない、単なる未納の場合は2年まで)
受け取る年金額も人によって異なるため(お隣の人と同じではありません!)ぜひこの機会に、ご自身の年金加入記録と金額をチェックしてみてください。