保険あれこれ

老後のお金をどう貯める?個人年金保険はNGな理由

将来のための貯蓄をしながら、保障もついている個人年金保険。

老後は公的年金だけでは心許ないから他にもお金を用意しておきたいというニーズは高く、人気のようです。

たしかに、老後のためにお金を用意しておくことは必要と思います。

でも、その手段として、個人年金保険は選ばない方が良い。その理由をまとめました。

個人年金保険ってどんなもの?

個人年金保険は、老後のための積立と保険がセットになった商品で、特徴はざっくりこんな感じです。

  • 支払った保険料の一部が積立となり(保険会社が運用)、ある年齢になったらその積立金を受け取ることができます。
  • 年金を受け取る年齢や期間は、60歳から10年間とか、65歳から5年間などと決めることができます。
  • 年金を受け取るに死亡すると、それまでに払い込んだ保険料に応じて、死亡給付金が支払われます。(これが保険の機能)
  • 支払った保険料を「保険料控除」という経費扱いにすることができます。その場合、年末調整か確定申告で「最高4万円×所得税率」分だけ、税金が安くなります。(控除を受けるには、契約内容に一定の要件あり)

セットになっていると楽だし、税金も安くなるから良さそうなイメージかもしれませんが、これってどうしても必要な商品でしょうか?

大前提として、保険は長い期間コスト(保険料)がかかる、トータルではかなり高額になる商品です。

どうしても保険でなければできないことは、コストをかけてでも加入するべきですが、貯蓄(運用)部分は自分でもできますよね。

貯蓄+保険という抱き合わせのせいで、余分なコストと制限がかかるので、お金を貯めることが目的であれば個人年金保険はNGです。

保険と貯蓄は「目的」が違う

保険は本来、いつ起きるかわからないこと、そして、もし起きたら自分ではとても賄えないお金が必要になる事態に備える手段です。

参加者みんなで支える助け合いの仕組みで、保険という「みんなの貯金箱」に少しずつお金を出し合うイメージです。

その少しのお金(保険料)が、いざという時には大きなお金(保険金)になって助けてくれるのが保険の役割です。

万が一の時には、この貯金箱からお金(保険金)を出してもらうので、自分のためではありますが、大勢の誰かのためでもある、だから保険に預けたお金は「みんなのお金」なんですね。

一方、貯蓄は自分だけのためにコツコツお金を積み立てることで、いくら貯めてもいいし、いつ何に使うのも自由です。

保険と貯蓄は、まったく別の方角を向いている商品なのです。

保険とセットにすることで、「貯蓄」部分は自由なお金ではなくなってしまいます。

お金が貯まる保険は、保険料を払い終える前に中途解約すると、元本割れするリスクを併せ持っているからです。

その場合は、お金が増えるどころか、積立てた額よりも少ない金額しか戻ってきません。

一旦契約すると、将来解約したくなった時でも、損するのが嫌だから解約できないという「縛り」ができてしまいます。

契約者にとってはかなり不利な状況といえますよね。

保険契約は、期間が30年超などと長期にわたるため、その間には色々な変化があるはずです。

お金が必要になったり、もっと良い商品が出てきたり、絶対に解約しないという約束はしづらいと思いませんか?

つまり、相当な長期間、元本割れリスクを背負っている状況といえます。

「保険+貯蓄」ではなくて、必要な保険は期間限定でシンプルに掛捨て(みんなの貯金箱に少しだけお金を入れる)、貯蓄は自分で好きなだけするのがわかりやすいと思うのです。

お金の価値はずっと同じではない

お金の価値は、時間と共に変化します。

モノやサービスの種類によって価格の上昇率はまちまちなので、お金の価値を単純に比較することは難しいのですが、ざっくり時代ごとの価格を見てみると・・・

品目1980年1990年2000年2010年
即席カップ麺60円76円84円145円
給食費 (公立中学)3,028円3,641円4,120円4,544円
タクシー初乗り料金380円540円660円710円
総務省統計局「小売物価統計調査(動向編)調査結果」より

お金の価値はずっと同じではないことがわかります。

今もらう10万円と、40年後にもらう10万円とでは、その価値が変わっている(その金額で買えるモノが違っている)可能性が高いといえますね。

お金の世界では「将来の価値は、額面よりも小さく評価する」のが基本的な考え方です。

「何十年も先の保険」は安心?

個人年金保険のメリットの一つに、預金よりも高い返戻率がうたわれますが、ここも冷静に判断したいところです。

払った保険料よりも多くお金が戻ってくるという100%超えの返戻率ですが、何十年も先の将来に受け取るのであれば、その価値は額面よりも割り引いて考えるべきですね。

例えば、個人年金保険の返戻率が106%だとすると・・・

30歳男性が、毎月1万5000円の保険料を30年間払い込んだ場合、受取額は額面で34万円増える計算になります。

支払う保険料受け取る金額差額
540万円574万円+34万円

今から30年先の未来がどんな社会になっているのか・・・ わからないけれど、この契約内容がその時代に合わなくなっている可能性も大きいでしょう。

「預金よりも増える」という決め文句ですが、30年間で+34万円。素直に喜ぶ価値があるかどうかは、冷静に考えたいところです。

外貨建て保険はさらにリスク大

外貨建ての個人年金保険は、円建てよりもさらに返戻率が高く、預金と比べてこんなにお得です!と比較されることがありますが、外貨建ての商品にはもれなく為替リスクも上乗せされます。

保険料を支払う時

保険料は外貨建てで「月額170ドル」のように表示されますが、日本での支払いは、その時の為替レートで換算した「円」で行います。

支払う保険料は為替の影響を受け、円安になると保険料が高くなります。

1ドル80円だったものが、1ドル100円に変動するような場合

年金を受け取る時

高い利率で、外貨ベースでは金額が増えたとしても、日本で年金を受け取る時には円に換金しなければなりません。

その際、円高になってしまうと受取額は目減りします。

1ドル100円だったものが、1ドル80円に変動するような場合

また、保険料の支払いや受取り時の換算レートは、保険会社所定のレートが適用されます。

手数料分が上乗せされていると理解しましょう。

為替の変動はコントロールできないし、金額に及ぼす影響が大きいのが特徴です。

できるだけリスクを取らずにお金を増やそうと考えるなら、外貨預金や外貨建て保険は、リスク・コストともに高く向いていません。

若い人ほど、将来の公的年金に対する不安が大きく、早くから個人年金保険を検討する人も多いです。

ただ、公的年金が心配だとしても、代わりに個人年金保険を選ぶべきかどうかは、よくよく検討しましょう。

少なくとも「お金を貯める」のであれば、保険と抱き合わせではない普通の投資信託の方が、自由で効率的に貯めることができるはずです。

限りある時間とお金を有効に使うために、保険と貯蓄はバッサリ切り離して、別々に考えることをおすすめします。