お金のこと諸々

お金の心配、減らせます!高校生からチェックしたい修学支援新制度

受験シーズンが終わり、新しい学校・学年に向けた準備の時期ですね。

4月から新・受験生となる高校生を抱えるご家庭では、いつもより緊張感のある新学期のスタートかもしれません。

大学進学には、貸与型の奨学金や教育ローンが有名ですが、2020年4月から低所得世帯を対象とした国の制度「高等教育の修学支援新制度」がスタートしています。

2024年4月からは支援対象が一部の中間層に拡大されます。

節目のこの時期に、スケジュールや制度内容についてまとめました。

国の修学支援新制度の概要

この制度は、住民税非課税世帯と、それに準ずる世帯を対象としています。

該当する世帯の学生は、「授業料・入学金の減免」と「給付型奨学金の支給」の両方を受けることができ、経済的な負担が少なく学ぶことができます。

2024年度からは支援対象が拡大され、扶養する子どもの数が3人以上の世帯と、私立理工農系の学科等に通う学生も対象になります。

対象になる学校

全国の約3000の大学、短期大学、高等専門学校(4年・5年)、専門学校がこの支援制度の対象になっています。

修業年限が6年間の医学部・歯学部等の場合、修業年限内は支援を受けることができます。

令和6年度から新たに支援対象となる「私立理工農系」は、理学・工学・農学といった名称でなくとも、たとえば「データサイエンス学科」「コンピューターシステム学科」「環境創生学科」などでも対象となる場合があります。

具体的な学校・学部名は、文部科学省のHPに掲載されています。

高等教育の修学支援新制度の対象機関リスト

理工農系学部学科の対象機関リスト

対象者の要件

以下の要件を満たす人全員が支援を受けられます。

  1. 家計の経済状況に関する要件
  2. 学業成績や意欲に関する要件
  3. 国籍、在留資格に関する要件
  4. 進学するまでの期間に関する要件

学校ごとの人数制限(推薦枠)はありません。

家計の経済状況に関する要件

家計には「所得」と「資産」の二つの要件があります。

所得に関する要件

原則として、この制度は住民税非課税世帯と、それに準ずる世帯の学生を対象にしています。

加えて、令和6年度からは新しい区分が創設され、世帯年収が600万円程度(申請時点での年収)の方も一部対象になります。

世帯年収の上限は、家族構成や就業形態(会社員か自営業か)等によって変わります。

ひとり親世帯
子どもの数第1区分第2区分第3区分第4区分
1人(本人)~約210万円~約300万円~約370万円~約630万円
2人(本人・高校生)~約270万円~約360万円~約430万円~約680万円
3人(本人・高校生・中学生)~約270万円~約360万円~約430万円~約680万円
3人(本人・大学生・高校生)~約350万円~約450万円~約510万円~約700万円
ふたり親世帯
子どもの数第1区分第2区分第3区分第4区分
1人(本人)~約220万円~約300万円~約380万円~約640万円
2人(本人・高校生)~約270万円~約300万円~約380万円~約640万円
3人(本人・高校生・中学生)~約320万円~約370万円~約430万円~約680万円
3人(本人・大学生・高校生)~約360万円~約450万円~約520万円~約740万円
  • 本人は18歳、中学生は15歳以下、高校生は16~18歳、大学生は19~22歳とします。
  • 年収は、両親の年収を合計したものとします。
  • 上記は給与のみの場合。事業所得の場合は目安年収が異なります。

正確な判定は、以下の算式で住民税(所得割)をもとに算出した額が、第1~第4区分に該当するかどうかで決まります。

住民税所得割の課税標準額 × 6% -(調整控除の額+税額調整額)

区分基準額支援額
第1区分(非課税世帯)100円未満標準額
第2区分(準ずる世帯)100円以上~25,600円未満標準額の2/3
第3区分(準ずる世帯)25,600円~51,300円未満標準額の1/3
第4区分(新規拡充)51,300円~154,500円未満

※ 多子世帯は標準額の4分の1、私立理工農系は文系との授業料差額を支援

家計に関する要件は、JASSOが毎年夏ごろに最新の所得(住民税情報)を確認し判定します。

一度、申し込んで認定を受けられなかった人でも、その後状況が変わった場合は、また申し込むことができます。

申込時より家計の状況が悪化した(収入が減った)場合や、税制上の控除額が増えた場合(たとえば家族の年齢に応じて扶養控除額等が増えた場合など)には、新たに支援対象となる可能性があります。

JASSOは日本学生支援機構の略称で、奨学金、留学生支援、学生のための情報提供などを行う独立行政法人です。

資産に関する要件

収入だけでなく、学生本人とその生計維持者が保有する資産の合計額が、以下の基準額内であることが要件になります。

対象となる資産は、現金、預貯金、有価証券の合計額で、不動産は含まれません。

生計維持者が2人:2,000万円未満

生計維持者が1人:1,250万円未満

住宅ローン等の借入金があったとしても、資産と相殺することはできません。

学業成績や意欲に関する要件

申込時、認定後とも、適格認定の基準により学業成績を確認し、支援を受けられるかどうかの判定があります。

一定以上の成績を修め、且つ、ちゃんと勉強する意欲があることが前提になります。

申込方法には、進学前に申し込む予約採用と、進学した後に申し込む在学採用があり、認定基準に少し違いがあります。

予約採用

進学前(高校3年生のとき)に申込を行うことで、翌年4月から支援を受けることができます。

予約採用では、高校2年次(申込時)までの評定が、支援を受けられるかどうかの判定要素になります。

評定平均値が3.5未満の場合、レポート提出や面談が必要になります。

在学採用

進学前の予約採用に申し込めなかった場合でも、進学先の学校で「在学採用」に申し込むことができます。

在学採用(1年生)の場合、高校の評定平均値が3.5以上、入学試験の成績が入学者の上位1/2以上等の要件があります。

2~4年生の場合は、在学する学校での成績、取得単位数の要件、学修計画書などをもとに判断されます。

国籍、在留資格に関する要件

日本国籍がある方、永住者、日本人もしくは永住者の配偶者等がいるなど、原則として日本に永住する意思があると認められる方が対象になります。

進学までの期間に関する要件

高校等を卒業してから大学等に入学する日までの期間が「2年以内」であることが要件になります。

高卒認定試験合格者、海外の学校を修了した方、個別の審査を経て入学する方などは、文部科学省のHPで要件を確認してください。

文部科学省 大学等に進学するまでの期間に関する要件

世帯収入によって変わる支援額

この制度の支援内容は「授業料・入学金の免除・減免」と、返済不要の「給付型奨学金」です。

世帯構成や収入などに応じて、受けられる支援額が異なります。

給付型奨学金の支給額

住民税非課税世帯(第1区分)の支給額が標準額となります。

非課税世帯に準ずる世帯(第2・第3区分)に対しては、標準額の3分の2、または3分の1が支給されます。

多子世帯の支給額は、標準額の4分の1となります。

私立理工農系の場合は、授業料平均額の文系との差額が支援されます。

下表は1ヶ月あたりの支給額です。

大学・短期大学・専門学校
区分自宅通学自宅外通学
国公立(非課税世帯)29,200円66,700円
私立(非課税世帯)38,300円75,800円
国公立(多子世帯)7,300円16,700円
私立(多子世帯)9,600円19,000円
高等専門学校(4年・5年)
区分自宅通学自宅外通学
国公立(非課税世帯)17,500円34,200円
私立(非課税世帯)26,700円43,300円
国公立(多子世帯)4,400円8,600円
私立(多子世帯)6,700円10,900円

授業料・入学金の免除・減免

各大学等が設定している授業料と入学金が免除(または減額)されます。

住民税非課税・準ずる世帯の減免額(年額)
区分入学金(国公立)授業料(国公立)入学金(私立)授業料(私立)
大学約 28万円約 54万円約 26万円約 70万円
短期大学約 17万円約 39万円約 25万円約 62万円
高等専門学校約 8万円約 23万円約 13万円約 70万円
専門学校約 7万円約 17万円約 16万円約 59万円
多子世帯の減免額(年額)
区分入学金(国公立)授業料(国公立)入学金(私立)授業料(私立)
大学約 7万円約 13万円約 7万円約 18万円
短期大学約 4万円約 10万円約 6万円約 16万円
高等専門学校約 2万円約 6万円約 3万円約 18万円
専門学校約 2万円約 4万円約 4万円約 15万円
私立理工農系の減免額(年額)
区分入学金授業料
大学約 9万円約 23万円
短期大学約 6万円約 16万円
高等専門学校約 4万円約 23万円
専門学校約 4万円約 15万円
  • 通信課程、夜間制の減免額は上記と異なります。詳細は文部科学省HPでご確認ください。
  • 入学金の減免は、(複数校合格している場合でも)実際に進学する学校のみ対象です。
  • 施設設備費や実習費など、授業料・入学金とは別に徴収されるものは減免の対象になりません。

入学金は、一般的に入学する前に納付を求められますが(1年生前期の授業料も併せて納付を求められることがあります)、学校によって、入学金の納付時期が延期される、もしくは一旦入学金を支払い入学後に減免相当額が還付される等、スケジュールが異なります。

入学後に大学等で手続きを行ってください。(高校を通じた申込みは行っていません)

支援の打ち切り・中断について

毎年、学業の成績、収入額、資産額の判定が行われ、場合によっては支援の打ち切りや中断などの可能性があります。

  • 修業年限で卒業できないことが確定した
  • 取得単位数が標準単位数の5割以下
  • 出席率が5割以下など、学修意欲が著しく低いと学校が判断した
  • 休学したとき など

進学先では、ちゃんと授業に出席し、真面目に勉強することが前提の制度です。

利用までのスケジュール

大学入学時から支援を受けようとする場合、その1年前から準備が始まります。

まとめ

推薦や特別選抜などで、早ければ秋には次のステップが決まる方もいるでしょう。

進む学校が決まると、多くの場合、すぐに入学金などの支払いが必要になります。

これからの受験勉強と並行して、進学にかかるお金の準備も計画的に進めておきましょう。