公的制度・税金

現役世代の強い味方|重い障害に備える「障害年金」について

病気やケガで働けなくなってしまったら?

考えたくない出来事ですが、若い人ほど、そうなってしまった時のダメージは甚大です。

日本には、公的な制度で「障害年金」という給付があり、深刻な病気やケガに見舞われた場合には、現役世代でも受け取ることができます。

若いあなたにこそ知ってほしい、国の障害年金についてまとめました。

障害年金とは?

障害年金は、生活が制限されるほどの病気やけが、または障害を持っている人に、国から支給される公的な年金です。

例えば、手足や目、耳に障害がある、心や脳の病気、重い内臓疾患などで、働くことが難しいような場合が対象となります。

身体的な障害手足の麻痺や運動障害、視覚障害、聴覚障害、内臓や血液の疾患、がんなど
精神的な障害うつ病、統合失調症、知的障害、発達障害など

申請から受給までの流れ

障害年金を受けるには、医師の診療を受け、病気や障害の状態を証明する診断書が必要になります。

診断書をもとに、病気や障害の程度、日常生活にどれくらいの影響があるかについて、日本年金機構が審査を行います。

一時的な症状ではなく、障害状態にあると認定されるまでの期間(初診日から概ね1年6ヶ月以上)→ 審査期間(約3ヶ月)→ 支給決定から振込まで(1~2ヶ月)と、実際に年金が振り込まれるまでには時間がかかることも覚えておきましょう。

ポイント①:初診日

障害年金には、障害基礎年金と障害厚生年金の2つがあります。

どちらを(もしくはどちらも)受け取れるかの判断は、その障害の原因となった病気やけがで初めて医師の診療を受けた時(初診日)にさかのぼります

障害基礎年金障害厚生年金
国民年金に加入していた(自営業、学生、アルバイト等)
・20歳前または日本国内に住む60歳~65歳未満で、年金制度に加入していない
厚生年金に加入していた(会社員、公務員)

ポイント②:保険料の納付要件

障害基礎年金、障害厚生年金のどちらの場合でも、初診日よりも前に公的年金制度に加入して、保険料を納めていることが条件になっています。

初診日の前日において、次のいずれかを満たしていなければなりません。

  • 初診日の前々月までに、公的年金の加入期間の3分の2以上、保険料を納めていること(免除も可)
  • 初診日の前々月までの1年間に保険料の未納がないこと

もし、あとになって一定以上の未納期間があるわかっても、後払いでは解決されず、その場合は障害年金の「受給資格がなくなってしまう」ということですね。

会社員であれば、保険料は給与天引きされるため概ね大丈夫ですが、若いうちの転職活動、フリーランスで働く場合の手続き忘れ、納付漏れは要注意です。

保険料が納められない状況であれば、めんどうでも必ず「保険料の免除・納付猶予」の手続きを行いましょう。

20歳前の年金制度に加入していない期間に初診日がある場合は、保険料の納付要件はありません

ポイント③:障害認定日

障害認定日とは、障害の状態を定める日のことで、以下のいずれかをいいます。

  • その障害の原因となった病気やけがの初診日から1年6ヶ月を過ぎた日(または、それ以前に症状が固定した日)
  • 子供の頃の病気やけがが原因で障害が残った場合は、20歳に達した日。

障害年金の請求は、「障害認定日」以降に行うことができます。

ポイント④:配偶者や子の加算

障害年金の受給権が発生してから、結婚や子供の誕生など、生活状況が変化した場合は、配偶者や子供の数に応じて年金額が加算されます。

【申請から受給までのイメージ】

障害年金の等級・年金額

障害の状態に応じて、以下の等級に分けられます。

1級介助がなければ生活できない(活動範囲はベッド周辺のみ)
2級日常生活が困難で働くことができない(活動範囲は家の中)
3級日常生活はできるが、労働に著しい制限がかかる(3級は障害厚生年金のみ)

受給できる年金は、障害の原因となる病気やけがで初めて医師の診療を受けた時(初診日)に、どの年金制度に加入していたかで決まります。

国民年金(自営業、学生、アルバイトなど)→ 障害基礎年金のみ

厚生年金(会社員や公務員)→ 障害基礎年金と障害厚生年金の両方を受給

障害基礎年金の年金額

(令和5年4月分から)

1級年金額
67歳以下993,750円 + 子の加算額
68歳以上990,750円 + 子の加算額  
2級年金額
67歳以下795,000円 + 子の加算額
68歳以上792,600円 + 子の加算額  

また、障害基礎年金を受ける方に「生計を維持されている子」がいる場合は、子どもの人数に応じて年金額が加算されます。

年金制度上の「子」とは、18歳になった後の最初の3月31日までの子(障害1級・2級状態の子は20歳未満)をいいます。

子どもの数加算額
2人まで1人につき 228,700円
3人目以降1人につき 76,200円

障害厚生年金の年金額

(令和5年4月分から)

等級年金額
1級報酬比例の年金額 × 1.25 + 配偶者の加給年金額(228,700円)
2級報酬比例の年金額 + 配偶者の加給年金額(228,700円)
3級報酬比例の年金額 

報酬比例の年金額は、ねんきん定期便の「厚生年金の額」で確認できます。

また、報酬比例部分の計算において、厚生年金期間が300月(25年)未満の場合は、300月とみなして計算します。

若くして障害をおった場合、実際の年金加入期間は短くても、25年間加入したものとして計算された年金額を受給できるのは心強いですね。

まとめ

障害年金は、個別の症状に基づいて判断されます。

一度申請をして認められなかった場合、再申請することができますが、元々の申請内容を覆すことは容易ではありません。

できる限り一度の申請で通るように、障害年金にくわしい社労士さんなどに手続きを依頼するのもおすすめです。

また、国の年金は年をとってから受け取るものだけでなく、万が一、若いうちに病気や障害をおってしまった場合の生活を支える大きな役割があります。

民間の保険を選ぶ時にも、すでに公的制度で備えている部分があることを覚えておくと、無駄のない選択ができますね。