公的制度・税金

不妊治療について|不安なときこそ、知っておきたいお金の話

手をつないで歩く2人の後ろ姿の写真
keikokudo@megumi

この記事は2026年9月時点の情報をもとにまとめたものです。

日本で不妊の検査・治療を受けたことのある夫婦は約6組に1組。

特別めずらしい治療ではなくなりつつありますが、仕事への影響やパートナーとの関係、精神的な負担は軽くはありません。

近年は体外受精などを含む基本治療が保険適用となり、以前よりは治療を受けやすくなっています。

とはいえ、治療費は高額になりやすく、通院が長く続くこともあるので、経済的に少しでも楽になれるように、知っておきたい制度をまとめてみました。

不妊治療が保険適用に

不妊の原因は、女性だけにあるわけではありません。男性の治療が必要だったり、検査をしても原因がわからないこともあります。

以前は、原因や治療内容によって、公的な保険でカバーされるものと、自由診療(保険適用外の治療)に分けられていました。

かつて、夫婦のどちらにも異常がなく不妊の原因がわからない場合や、治療を受けても妊娠しない場合は、健康保険ではカバーされない自由診療となり、かかる費用は10割(全額自己負担)でしたが、令和4年度からは多くの不妊治療が3割負担で受けられるようになりました。

一般不妊治療と生殖補助医療の治療の流れを示すフローチャート

参考:こども家庭庁 不妊治療に関する取組

年齢・回数要件について

保険診療で体外受精、顕微授精を受ける場合、年齢などの制限が設けられています。

年齢制限

治療開始時において、女性の年齢が43歳未満の方が保険診療の対象になります。男性の年齢制限はありません。

回数制限
初めての治療開始時点の女性の年齢回数の上限
40歳未満1子ごとに通算6回まで
40歳以上43歳未満1子ごとに通算3回まで

保険診療で行った胚移植の回数のみをカウントしますので、過去の治療実績や助成金の支給回数は加味されません。

治療費が高額になった場合

とはいえ、長期にわたって定期的な通院が必要だったり、治療費が高額になる可能性もあるでしょう。

その場合、申請(申告)することで、医療費を一定額以内に抑えられたり、税金の負担が軽くなることがあります。

  • 1ヶ月あたりの医療費が高額になった場合 → 高額療養費制度
  • 医療費が年間10万円以上かかった場合 → 医療費控除

経済的な負担が軽くなれば治療も続けやすくなりますので、該当するものがあれば、ぜひ活用してみてください。

高額療養費制度

保険適用になる治療を受け、その費用が一定額を超えた場合、加入している健康保険に「高額療養費」を請求することができます。

1ヶ月に窓口で支払った治療費が「ひと月の上限額」を超えた場合、その超えた分が申請によって戻ってくるものです。

ひと月の上限額は、年齢や収入によって異なります。

年収区分別の高額療養費自己負担限度額の一覧表。月額上限と年間上限を掲載

自己負担額について

たとえば、年収500万円の人で、1ヶ月の総医療費が100万円かかった場合でも、高額療養費制度により、自己負担額は約9万円に抑えられます。

1ヶ月の総医療費:100万円

窓口でひとまず支払う金額:30万円(保険適用で、医療費は3割負担となるため)

ひと月の自己負担上限額:約9.3万円

窓口で支払う30万円の内訳図。自己負担限度額と高額療養費の払い戻し部分を示している

高額療養費を申請すると、一旦支払った30万円のうち、自己負担の上限額約9万円を差し引いた、約21万円が後で払い戻されることになります。

マイナ保険証で受診すれば、オンラインで所得区分が連携されるため、窓口での支払い時点で自己負担限度額までに抑えられます。(この例の場合、「ひとまず30万円」を支払う必要はなく、はじめから約9万円だけで済みます)

4回目以降はさらに引き下げ

高額療養費の払い戻しを受けた月数が、1年間(直近12ヶ月)で3月以上あった場合、4月目から自己負担額がさらに引き下げられます。(多数回該当

多数回該当による自己負担額の軽減を示す棒グラフ。4ヶ月目からさらに引き下がることを表している

自己負担限度額が約9万円の場合、多数回該当になると1ヶ月あたりの上限額は44,400円まで引き下げられます。

さらに2026年8月からは、この多数回該当に加えて「年間上限」という新しいしくみもスタートしました。

毎月の医療費が高額療養費の上限には届かなくても、1年間の自己負担額を合計して一定額を超えたら、その分が後から戻ってきます

これまでは「毎月ギリギリ高額療養費の対象にならない」という方は負担がかさみがちでしたが、年間上限ができたことで、家計の見通しが立てやすくなりました。

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医療費控除

1年間で一定額以上の医療費を支払った場合は、税金が還付される医療費控除を利用しましょう。

確定申告をすると、その年の所得税・翌年の住民税が軽減されます。

医療費控除の対象条件

1月〜12月の1年間に、ご自身と生活費を共にする家族の医療費を支払った方のうち、次のどちらかに当てはまる方が対象です。

  • 支払った医療費の合計が10万円を超える
  • 総所得金額等が200万円未満の方は、医療費の合計が「総所得金額等の5%」を超える
自由診療も対象になる

医療費控除は、健康保険が適用される治療に限りません。治療を目的とするものであれば、自由診療(保険適用外の治療費)も対象になります。不妊治療は自由診療の割合が大きくなりやすい治療なので、支払った費用は忘れずに記録しておきましょう。

家族全員分を合算できる

不妊治療の費用だけでなく、生活費を共にする家族全員の医療費を、1年間分まとめて合算することができます。

対象になる具体的な費用

医療費控除の対象になる費用には、次のようなものがあります。

  • 不妊治療や検査のために病院・薬局に支払った費用
  • 通院する時の交通費(主に公共交通機関。自家用車のガソリン代や駐車料金は対象外)
  • 入院時の部屋代や食事代(洗面用具やパジャマなどの購入費、個人的な都合で個室に入院した場合の差額ベッド代も対象外)
  • 治療を目的とした鍼灸・マッサージなどの施術料金(疲れを癒したり体調を整えたりする目的のものは対象外)
医療費控除の対象となる金額

医療費控除の対象額 = 実際に支払った医療費の合計額 - 差引額(①+②)

差し引く金額

高額療養費、民間の保険金、助成金など、医療費を補填する目的で受け取った金額

10万円(総所得金額等が200万円未満の方は、総所得金額等の5%相当額

助成金や民間の医療保険から給付金を受け取った場合、その金額は差し引いて申告します。

また、不妊治療は自由診療も多く支払額が大きくなりがちですが、控除できる額は最高200万円まで、超えた分は対象外になります。

医療費控除でいくら戻る?

医療費控除は、控除額がそのまま戻ってくるわけではありません。実際の還付額は、次の式で計算されます。

還付額の目安 = 医療費控除額 × 所得税率

つまり、所得税率(=収入)が高い人ほど、還付額も大きくなります。

例:医療費控除額50万円の場合

課税所得所得税率還付額
150万円5%2.5万円
(50万円×5%)
300万円10%5万円
(50万円×10%)
400万円20%10万円
(50万円×20%)
700万円23%11.5万円
(50万円×23%)
1000万円33%16.5万円
(50万円×33%)

※ここでの金額は、年収ではなく「課税所得」です。(年収から、給与所得控除や各種所得控除を差し引いた後の金額)

申告する人によって還付額は変わる

所得税を払っていない方(専業主婦/主夫など)は、そもそも還付を受けられません。共働きのご夫婦であれば、所得税率が高い方が申告したほうが、還付額は大きくなります。

還付の手続き方法

医療費控除を受ける場合は、医療費を支払った翌年の2月16日〜3月15日の間に確定申告を行います。会社で年末調整を受けている方も、医療費控除はその対象に含まれないため、自分で確定申告が必要です。

なお、申告し忘れていた場合でも、5年前までさかのぼって還付申告ができます。心当たりのある方は確認してみてください。

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通院しやすい病院選びを

不妊治療は、体と気持ちはもちろんのこと、毎日の生活にも大きな 影響を及ぼします。

治療は長期にわたることも多いので、不安や希望をしっかり受け止めてくれる先生に診てもらいましょう。

また、治療を始めると、頻繁に病院に通って治療・投薬を受けたり、夕方以降は仕事帰りの人でとても混み合い、時間がかかったりもしますので、通院しやすい病院を選ぶこともポイントです。

先が見えないって、とてもつらいことですが、お金のことはある程度整理して考えられる部分でもあります。

一人で抱え込まずに、家計のことは個別相談もぜひ利用してみてください。

ABOUT ME
工藤 恵子
工藤 恵子
ファイナンシャル・プランナー(CFP)
仙台市の独立系FPです。保険などの商品は売らずに、家計の見直しをお手伝いしています。お金のことはなるべく考えずに生きられるよう、シンプルなしくみ作りを後押しします。
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