近年、日本の離婚件数は減少傾向にありますが、未成年の子供がいる夫婦の離婚は全体の約6割を占めます。
離婚という一大事にゆっくり将来を考える余裕なんてないかもしれませんが、お金の問題は視野に入れておきたいところ。
パートナーがいなくなって経済的に欠けてしまう部分を支援する制度や、請求できる権利等は、事前に把握しておくと良いですね。
パートナーに請求できること
結婚し、一緒に過ごした期間に築いた財産は、基本的に夫婦二人のものと考えられます。
別れる時には、それらの共有財産を分け合ったり、離婚の理由によっては慰謝料を請求することができます。
財産分与について
結婚生活が長くなるほど、その間に預金をしたり、マイホームを購入したり、夫婦の財産は基本的に増えていきます。
その財産は、結婚生活中に夫婦二人が協力して築いたものとみなされ、離婚する時には、著しく不平等にならないように、分けることができます。
具体的には、結婚中に築いた預金、不動産(相手名義でも可)、家財道具、厚生年金記録などが対象になります。
何をどう分けるかは、共働き・専業主婦(主夫)に関わらず、財産の2分の1ずつ分け合うことを目安に、話し合いで決めることになります。(いくらもらえる、といった法的な決まりはありません)
財産分与は、財産を分け合いたい(ほしい)と思う側が、自分から請求することができる「権利」です。
年金記録の請求は離婚後2年以内という期限もありますので、速やかに行動しないといけませんね。
慰謝料について
離婚の原因が、相手の浮気や暴力、生活費を渡さない等の場合は、慰謝料を請求することができます。
慰謝料は「精神的な苦痛」に対して支払われるお金です。(なので、全員が請求できるものではありません)
精神的な苦痛といっても、はっきり線引きできないものもあります。
たとえば、性格が合わないとか、家事をしない、嫁姑の仲が悪いなど。
話し合いで折り合いがつかない、すでに揉めている場合は、弁護士さんに依頼しましょう。
子供を育てるためのお金
子どもがいる場合は、成長とともに教育費の負担が大きくなりますので、請求できるもの、支援を受けられる制度はしっかり確認しておきましょう。
養育費について
子供が「子供」である間は、親には必要なお金を払って育てなければいけない責任があります。
離婚して一緒に住んでいなくても、親である以上その責任は変わりません。
養育費の支払いは「夫婦間で取り決めをした時期まで」ですが、子供自身が働いて収入を得るまでの期間が目安になります。
金額は、親の収入と子供の数・年齢から妥当なところを話し合って決めていきます。
離婚した母子家庭のうち、養育費をもらう約束をしていなかった世帯は50%を超えています。
その理由の上位は、「相手に支払う能力が意思がないと思った」「相手と関わりたくなかった」でした。(厚生労働省:令和3年度全国ひとり親世帯等調査結果報告の統計より)
子供の成長とともに、進学などの節目では大きなお金が必要になります。
相手にも事情があり、できる範囲が限られるかもしれませんが、はじめから諦めることはせず、子供のために養育費は支払ってもらうように交渉しましょう。
国や自治体からの支援
国や自治体が、ひとり親家庭を支援する制度を用意しています。
児童扶養手当
0~18才までの子供がいる家庭に対し、所得に応じて支給するもの。
たとえば母子2人暮らしで所得が150万円の場合、支給額は月2万5000円ほど。
寡婦控除
夫と死別や離婚した女性限定の所得控除で、税金が安くなります。
国民健康保険・国民年金の保険料免除
前年より大幅に所得が少なくなり、保険料を納めるのが難しい場合は、免除が受けられます。
医療費の助成
ひとり親家庭の親と子供、両方が対象になる制度で、自治体が助成するもの。
その他、住んでいる地域によって、住宅手当、児童育成手当、電車やバスなどの割引、保育料の免除・減額などがあります。
一つ一つはそれほど大きな金額にはなりませんが、受給資格がある場合はしっかり活用できるように、あなたの自治体のホームページや窓口でよく確認してくださいね。
自分の老後と相続のこと
いずれ子供は成長し、独り立ちしていきます。
視線をずっと先に向けてみると、子育ての後にも、長い長い人生が見えますよね。
再婚しているかもしれないし、自由な独身を楽しんでいるかもしれませんが、どんな人生であってもお金は頼りになります。
厚生年金記録について
分けられる財産の中に、パートナーの「厚生年金記録」があります。
結婚生活中、パートナーが会社員で厚生年金に加入していた場合、その加入記録を財産として分けることできます。
- 分割の対象になるのは、婚姻期間中の厚生年金記録です。国民年金は対象になりません。
- 離婚後2年以内に手続きを行う必要があります。(裁判が長引く等で離婚後2年を経過した場合は、調停等の成立日から6ヶ月以内であれば請求可)
分割方法は2種類あります。どちらも、原則として離婚後2年以内が請求期限となります。
- 二人からの請求によって分割できます。
- 分割の割合は、話し合いによる合意、または裁判によって決められます。
- 会社員の配偶者に扶養されていた人(たとえば会社員の妻で専業主婦の方など。第3号被保険者といいます)が請求します。
- 分割の割合は、2分の1ずつ
- H20年(2008年)4月以降の第3号被保険者期間中が分割の対象になります。
国の老齢年金は、あなたが亡くなるまで支給されます。
長い老後生活の助けになりますので、該当する場合はしっかり請求してくださいね。
自分への投資をしよう
投資って金融だけでなく、自分のために時間とお金を使うことです。
家計の中に、少しでもいいので「自分のためのお金」を組み込んでみましょう。
このお金は、自分のために毎月「必ず使い切る」お金です。
ちょっとした趣味でもいいし、自分へのご褒美でもいいですね。長い人生のどこかで、きっと役に立つはずです。
いつか訪れる相続のこと
親が離婚・再婚をした場合でも、子供はいつまでも血のつながった親の相続人であり続けます。
離れて暮らしたり、戸籍が別々になっても、血縁上の親が亡くなった時には、相続人として財産を引き継ぐことになります。(引き継ぎたくない時は手続きが必要)
相手方に新しい家族ができた場合は、その子供や配偶者も相続人になります。
普段接することのない人同士が、相続人という立場で協議しなければならない日が、将来必ずやってくるんですね。
話し合いで揉めそうとか、心配事がある場合は、司法書士、相続診断士など専門のアドバイザーに早めに相談すると良いですね。