会社にお勤めをしながら、副業や起業する人が増えています。
副業OKという企業も増えてきて、一つの仕事に留まらず自由に稼ぐことが普通になりつつありますね。
収入を得ると、少々面倒なのが税金の手続きです。
会社員一筋であれば年末調整で簡単に済みますが、副業などで別収入がある場合に注意したいことをまとめました。
所得の種類
個人の収入には「所得税」という税金がかかります。
所得税は「何によって得た収入か」に応じて、10種類に分かれています。
① 事業所得 商業、工業、農業、漁業など、事業で得る所得 |
② 不動産所得 土地や建物、船舶や航空機などの貸付から生じる所得 |
③ 利子所得 公社債や預貯金などの利子 |
④ 配当所得 株式の配当、投資信託の収益の分配などの所得 |
⑤ 給与所得 年俸、給料、賃金、賞与など |
⑥ 譲渡所得 土地や建物、株式、その他資産を売ったことによる所得 |
⑦ 一時所得 賞金、懸賞当選金、生命保険の一時金や満期金など |
⑧ 山林所得 所有期間が5年超の山林を伐採して売ったことなどによる所得 |
⑨ 退職所得 退職金や、企業/個人型年金(iDeCoなど)で一時金として受け取るもの |
⑩ 雑所得 公的年金、原稿料、講演料、生命保険の年金など(他の9種類に該当しないもの) |
このうち副業に関係するのは、主に「事業所得」と「雑所得」です。
事業所得 vs 雑所得
副業で得た収入が事業に該当するか(事業所得)、その他の収入(雑所得)かによって、納める税額が異なる場合があります。
事業所得とは
事業(農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業、その他)を営んでいる人が、その事業から得た儲けを「事業所得」といいます。
後述しますが、事業所得には、節税できる特典があります。
雑所得とは
利子、配当、不動産、事業、給与、退職、山林、譲渡、一時所得のどれにも該当しないものを「雑所得」といいます。
雑所得には節税できる特典がほとんどありません。
事業所得で節税できる理由
事業所得には節税につながる大きなポイントが2つ(損益通算と青色申告)あります。
損益通算
事業において、収入よりも必要経費の方が多く、赤字になってしまった場合、その赤字分は給与所得など他の所得から差し引くことができます。
黒字と赤字を合算できるルールで「損益通算」といいます。
本業が会社員で給与収入がある場合、副業が赤字でも、損益通算をすることで、本業の税額が少なくなり、トータルでは節税効果があるということですね。
青色申告
青色申告は、取引内容を複式簿記で記録して申告する制度で、以下のような特典を受けることができます。
青色申告特別控除
青色申告をすると、所得から最大65万円を差し引くことができます。控除で税金計算のもとになる「所得」が下がり、税金を安くする効果があります。
純損失の繰越控除・繰戻還付
副業が赤字で、本業の給与所得から赤字分を差し引いてもなお損失がある場合、翌年以降の所得からも差し引くことができます。これにより、翌年以降も節税効果が続きます。
また、赤字が出た年の前年が黒字であれば、前年に納めた所得税(全部または一部)の還付を受けることができます。
少額減価償却資産の特例
通常は何年かにわけて少しずつ経費にしなければいけないところ、取得価額30万円未満の固定資産であれば、一括で必要経費にすることができます。(年間300万円まで)
事業のために、デスクやPC、ソフトウェア等を購入した場合などが該当します。
利用できる特典 | 事業所得 | 雑所得 |
---|---|---|
他の所得との損益通算 | ○ | ✕ |
青色申告特別控除 | ○ | ✕ |
純損失の繰越控除・繰戻還付 | ○ | ✕ |
少額減価償却資産の特例 | ○ | ✕ |
事業所得に必要な帳簿
事業の取引内容は、複式簿記で記帳することが原則です。
単にお金の出入りを記録するのではなく、財政状態(資産や借金の状況)と、成績(1年間でどれだけ儲かったか)の両方を記録するのが複式簿記です。
複式簿記で記録した帳簿、決算関係の書類は、5~7年間(書類により異なる)保存しておかなければなりません。
簿記に自信がない場合は、会計ソフトを使うとスムーズに作成できます。
最近の会計ソフトは、会計初心者でも使いやすく、日付、金額、取引内容等を入力すると自動的に「借方・貸方」の形で仕訳され、複式簿記で記帳される仕様になっています。
自動仕訳と確定申告書の作成機能があり、ソフトからそのまま電子申告できるものがおすすめです。
副業は事業所得にできる?
事業所得に該当するかどうかは、社会的・一般的に「事業といえるかどうか」で判断されますが、帳簿の有無と、事業の規模(収入)はポイントになります。
帳簿がない場合
「事業」というからには、売上や経費などをきちんと記録して、保管しておく必要があります。
帳簿がない場合、事業所得とは認められない可能性が高くなります。
帳簿がある場合
きちんと帳簿をつけていても、収入が少なかったり、何年も赤字が解消されない場合、事業と認められるかどうかは個別の判断となります。
- 年間収入300万円以下で、本業に対する割合が10%未満の場合
- 3年程度ずっと赤字で、事業の収入を上げるための営業活動をしていない場合
たとえば年収500万円の会社員で、副業収入が50万円未満のようなケース。帳簿をつけていても、副業収入がわずかなので事業とはいえない、と判断される可能性があります。
副業収入 | 記帳・書類の保存あり | 記帳・書類の保存なし |
---|---|---|
300万円超 | 概ね事業所得 | 概ね雑所得 |
300万円以下 | 概ね事業所得 | すべて雑所得 |
書類の不備・無申告に注意
会社員の副業などによる収入が事業所得になるか、雑所得になるのかは、これまで基準が曖昧でしたが、一定の基準として「記帳、帳簿の保存」が設けられ、2022年分の確定申告から適用されています。
会社員の副業で、事業所得に当たらない場合でも、給与以外に20万円以上の所得がある場合は確定申告をしなければなりません。
無申告が発覚した場合は、無申告加算税や延滞税などのペナルティが課せられ、本来の税額よりもかなり多くの税金がかかってしまいます。
副業であっても、会計ソフト等を活用して、最低限の記帳と申告、書類の保存を行いましょう。