住まい・不動産

「脱炭素化」は住宅ローン控除にも影響大 要件が大きく変わります

住宅ローン控除の要件が、今年度から段階的に変わります。

住宅ローン控除とは、住宅ローンを利用して、自分が住むための住宅を取得した場合、年末の住宅ローン残高の一定割合を所得税から差し引く制度です。(投資用や別荘などのローンは対象外)

所得税から控除しきれなかった場合は、翌年度の住民税から控除することができます。

2024年以降、控除がまったく受けられなくなる可能性もある大きな変更ですので、これから住宅購入を考えている方は、新しい要件をよく確認してくださいね。

改正の主な変更点

2022年度の税制改正では、住宅ローン控除について、主に以下の点が変更になりました。

  1. 適用期限の延長 → 制度の期限が4年間延長され、2025年12月末までに入居した場合まで適用となります。
  2. 控除率の引き下げ → 年末のローン残高に対して1%だった控除率が、0.7%に引き下げられました。詳しくは後述します。
  3. 控除期間の延長 → 新築住宅は、住宅ローンを組んでから原則13年間、既存住宅または増改築は10年間、毎年控除を受けることができます。
  4. 認定住宅の優遇 → 2024年以降は、一定の省エネ基準を満たさないと住宅ローン控除が受けられなくなります。ここ重要!
  5. 築年数要件の変更 → 中古住宅の築年数要件(木造なら築20年、マンションは築25年以内)が廃止、代わりに新耐震基準を満たしていることが要件となります。
  6. 床面積要件の緩和 → 2023年の年末までに建築確認を受けた新築住宅のうち、40㎡以上50㎡未満の住宅についても適用可能。(通常は50㎡以上という要件があります)ただし、控除を受ける人の所得が1000万円以下の場合に限ります。
  7. 所得要件の引き下げ → 控除を受ける人の所得要件が3000万円から2000万円に引き下げられます。

中でも重要なポイントについて、少し詳しく見ていきましょう。

控除率が0.7%に引き下げ

税額控除の額が「住宅ローンの年末残高×0.7%」に引き下げられました。

例えば、年末時点のローン残高が2000万円の場合、返ってくる税額が従来よりも6万円少なくなる、ということですね。

昨年までは2000万円×1%=20万円 

今年からは2000万円×0.7%=14万円

昨今の住宅ローンは、金利がかなり低い状態が続いており、住宅ローン控除によって、住宅購入者の減税額の方が、支払う利息よりも大きくなる(ローンを組むとお金が増える)といった状態が問題視されてきました。

これまでの少し歪んでしまった状態を是正する措置ともいえます。      

認定住宅優遇、一般住宅は要注意

住宅の性能(省エネ基準)によって、年末残高の上限が変更になります。

新築住宅改正前2022-2023年2024-2025年
認定住宅5000万 5000万 4500万
ZEH住宅 New!4500万 3500万
省エネ住宅 New!4000万3000万
一般住宅4000万3000万2000万

また、従来の制度では「認定住宅」と「一般住宅」の2パターンだったものが、2022年以降は省エネルギー性能に応じて、ZEH水準省エネ住宅省エネ基準適合住宅が追加され、4段階になりました。

区分ごとの住宅の特徴

省エネルギー性能は、外壁・床・屋根・天井など「住宅を囲んでいる部分の性能」と、照明・給湯・家電などによる「一次エネルギー消費」の二つの側面で評価されます。

省エネ性能が高い住宅では、これまでと同等の控除を受けることができますが、年数が進むごとに、年末残高の上限額も小さくなる傾向にあります。

① 認定住宅

高い省エネ性能を有する住宅(認定長期優良住宅および認定低炭素住宅)

② ZEH水準省エネ住宅

現行の省エネ性能基準を超えるもの。
太陽光発電等で家全体でのエネルギー収支をゼロにすることを目指した住宅で、使用するエネルギー≦生み出すエネルギーのようなイメージ。

③ 省エネ基準適合住宅

現行の省エネ性能基準を満たすもの。

④ 一般住宅

省エネ性能が一定基準に満たない一般住宅。
2024年6月末までに完成する等、特定条件をクリアしないと、2024年以降は住宅ローン控除が適用されません
また、適用になる場合でも、ローン残高の上限2000万円まで、年数は10年までと、省エネ基準適合住宅に比べて、減税メリットが小さくなります。

住宅性能の評価には、コストと時間がかかります。

料金は住宅の規模や特性によっても異なり、評価機関が独自に設定しますが、そのコストは最終的に住宅を取得する人が負担することになります。

中古住宅の要件が耐震基準に

住宅ローン控除は、中古住宅を購入する時にも利用できます。

2021年までは、中古住宅の場合、木造なら築20年以内、マンションは築25年以内という築年数要件が設けられていました。

2022年以降は、築年数の要件は廃止、代わりに新耐震基準を満たすことが要件になりました。 

単純に築年数ではなく、「耐震性」が資産価値を図る基準に変わってきています。

登記簿上の建築日付が1982年(昭和 57 年)1月1日以降の家屋については、新耐震基準に適合している住宅とみなされます。

総合的に税額控除は減少へ

今後は、ほぼすべてのケースで、住宅ローン控除による減税額(受けられるメリット)は減少していきます。

世界的な脱炭素化への動きは、個々の住宅購入にも影響を及ぼしているんですね。

2024年以降は、なるべくCO2を出さない省エネ住宅でなければ、住宅ローン控除や補助金を受けられなくなるものと考えておきましょう。