2022年の暮れ、日銀が長期金利の変動幅の引き上げを発表しました。
日銀には、世の中に出回るお金の量をコントロールする役割があります。
これまでは、金利を低く誘導し、お金を借りやすくして経済を活発にすることを目標としていました。
今回の緩和修正では、意図的に0.25%付近に抑えこんでいた金利を、「0.5%までの上昇は許容する」ことにしました。
家計に影響する問題として、住宅ローンの金利上昇を心配される方もいるでしょう。
住宅ローンの金利タイプ、特に利用者が多い変動金利についてまとめました。
住宅ローン 3つのタイプ
住宅ローンには、主に3つの金利タイプがあります。
それぞれの金利は、国債の利回りや銀行が企業に貸し出す際の金利を基準に決められ、タイプごとに異なります。
金利タイプ | 特徴 |
---|---|
全期間固定型 | 全期間通して金利が変わらない |
固定金利選択型 | 返済開始から一定期間は金利が固定 |
変動型 | 金利が毎月変わる |
全期間固定型
借りる時に返済終了までの全期間の金利を決める方法です。
それ以降の金利変動に左右されないため、安定した資金計画ができます。
ただし、世の中の金利が下がった場合でも、借入時の金利がずっと適用されます。
固定金利選択型
返済開始から一定期間の金利を固定し、その期間が終了するときに再度金利タイプを選択する方法です。
固定期間中に変動金利に変更することはできません。
固定期間が終わると、変動金利か再度固定金利を選ぶことができますが、その際の金利は定まっていないので金利上昇のリスクがある上に、引き下げ幅(金利の割引)が初めより小さくなることが多いため、返済額が増える可能性があります。
変動金利型
半年ごとに金利が変動し、5年毎に返済額が見直される方法です。
固定型よりも低い金利が設定されていますが、金利上昇リスクがあります。
変動金利型の特徴
長く続く低金利下で、住宅ローン利用者のうち、7割以上が変動型を選択しています。(2022年4月調査)
変動金利型は、借入期間中の金利が半年ごとに見直され、5年毎に返済額が見直されるタイプの住宅ローンです。(返済額を半年ごとに見直す商品もあります)
- 固定型よりも金利が低い
- 金利が下がると、それに応じて支払う利息が少なくなり、総支払額が減る
- 金利が上がると返済額が増える
- 金利上昇に伴い、利息が大幅に増えると元金がなかなか減らず、総支払額が大きくなる
変動型の「5年・125%ルール」とは
多くの金融機関では、「5年・125%ルール」を採用しています。
毎月返済額が変わるのは5年に一度
金利が変わってもすぐに返済額が変わるのではなく、毎月返済額は5年毎に見直されます。
5年間は、適用金利が変わっても、同じ返済額の中で「元本と利息の割合」だけが変わります。
返済額自体は一定期間変わらない安心感の一方で、金利が上昇すると、返済額のうちの利息部分が増えるため、その分元本を減らしにくくなってしまいます。
金利上昇時の返済額アップは125%まで
返済額が見直される際、急激な返済額アップを避けるために、どれだけ金利が上がったとしても返済額の上昇幅を最大で1.25倍(25%増加まで)に制限しています。
ただし、利息が減額されるのではなく、125%を超えて払いきれなかった利息は元本に追加され、最終的には全額支払う必要があります。
金利が下がり、毎月の返済額が減少する場合には、特に制限はなく減額されます。
少ないですが「5年・125%ルール」がない金融機関もあります。
このルールを適用しないことで、金利が上昇しても返済額の制限を受けずに元本の返済がスムーズに進む場合もありますので、金融機関を選ぶ時に確認してみると良いでしょう。
金利上昇時の未払利息
適用金利が短期間に大きく上昇した場合、「未払利息」が発生する可能性があります。
毎月の返済で何を優先して支払うかは金融機関によって異なりますが、一般に ①未払利息、②約定利息(契約に基づいて毎月支払うことになっている利息のこと)、③元金 の順番で充当されます。
未払利息の発生
- 毎月の返済額のうち、利息支払い分が多くなると、元本の減り方が鈍っていく。
- さらに金利が上がると、利息分が毎月返済額を上回る。この場合、上回った部分が未払利息となる。
未払利息の返済
未払利息がゼロになるまでは、毎月の返済額は未払利息に充当されます。(最終回まで未払利息が残る場合は、最終回での精算となる)
こうなると、毎月返済をしても元本部分が減らないことになってしまいます。
実際に起きる可能性はごく低いですが、念のため心に留めておきましょう。
変動から固定に換える難しさ
固定金利型と変動金利型では、金利を決めるしくみが異なります。
固定金利型 → 長期金利
変動金利型 → 短期金利
今回の日銀の修正は、長期金利の見直しのため、「固定金利型」に影響があります。
短期金利については変更がなかったので、直接的に「変動型金利」もすぐに上昇する、ということではありません。
ただし、金利が上がる時は、長期金利の方が短期よりも先に上がるといわれています。
そのため、「短期金利が上昇し始めたら固定型に借り換えよう」としても、その時点ではすでに固定型の金利が大きく上昇している可能性が高く、現実的には難しい状況になります。
近年、建築資材の高騰も続いていて、住宅にかかるコストは、これまでよりも上がることは避けられそうにありません。
変動金利型では、比較的低めの金利と引き換えに、「将来、金利が上昇した場合は返済額が大きくなる」リスクを、借り手である契約者(あなた)が負うことになります。
上昇した金利でも耐えられる返済計画かどうか、不安がある場合は早めに手を打つことが重要です。