FPになって良かった思うことの一つは、いらない保険をやめて、その分の保険料を別の使い道に回せるようになったことです。
保険は入って当たり前という風潮の中、以前の私が考えることといえば「どの商品が今どきで、どれがお得なんだろうか」ということでした。
そのために、まず最初に保険屋さんに相談することも当たり前と思っていました。
でも、振り返ると、そのスタート時点からズレていたようです。
保険を選ぶ時には、どんな視点を持つと良いかをまとめました。
自分のお金で解決可能か?
どの商品が良いかな?の前に、そもそも「保険じゃないとダメ?」と考えてみましょう。
保険で得られるものは、想定していた不幸なこと(病気や亡くなるなど)が実際に起きてしまった場合に受け取ることができる「保険金」です。
保険料というお金を払って、保険金という別のお金を手に入れるしくみですね。
では、一体いくらの保険金があれば良いのか?
その判断基準は「自分のお金で何とかなるか、ならないか」と考えましょう。
自分のお金ではどうにもならないような困った事態とは何か?と考えると、その場面はかなり限定されると思います。
たとえば、小さい子供がいる家庭の稼ぎ頭であるお父さんが亡くなった場合。
そう起きることではありませんが、残された家族の生活は一気に不安定になってしまう可能性がありますね。
こういった場面で必要なお金は、数百万円では到底足りないでしょう。
もし起きたら本当に困ってしまう、それ以降の生活が立ち往かなくなってしまう場面こそ、保険の出番です。
守るべき責任がある場合は、いつまでという期間を区切って、保険で備えておけば安心ですね。
一方で、一泊二日の入院はどうでしょう。
この費用が自力で払えないという方は少ないでしょうし、もしそうなら、保険以前に根本的な家計改善が必要な状況かもしれません。
このような保険金額が軽いケースは、「保険に加入すべきかリスト」上の優先順位がぐっと下がります。
重大な問題から順番をつけていき、最終的には「保険がないと絶対ムリ」というものだけに絞り込むと良いですね。
その際、公的な医療保険もしっかり考慮して、必要以上に契約を増やさないように気をつけましょう。
ポイントは、保険金があったら嬉しい、というふわっとした安心感ではなくて、保険じゃないとどうにもならないという、数字ではっきり分かる基準で考えることです。
自分でできることは自分で
お金が貯まる保険は、「掛捨てではないからいずれお金は返ってくる、だからおトクですよ」と紹介されたりします。
とは言え、どんな保険であっても、基本的なしくみは「掛け捨て」です。
お金が「貯まる」と言われる部分は、保険会社が「あとで返すお金」という貯金箱に管理して、別途支払う形になります。
そのため、掛捨て部分と貯める部分との合計で、保険料も高くなります。
保険会社が、あなたのお金を代わりに運用して少し増やしてくれるというイメージですが、あくまでも保険商品ですので、細かいルールは保険会社が設定します。
たとえば、保険金が支払われるような事態ではないけれど、急にお金が必要になった場合、貯まった部分を引き出したいと思うかもしれません。
もちろん解約することは自由ですが、途中で解約すると返金額は少なくなってしまいます。(元本割れ)
本来、貯蓄はいつでも自由に使えて、特に緊急時に頼りになるお金です。
その自由を制限するしくみに、わざわざお金を預ける必要があるかどうか、大切な検討ポイントですね。
iDeCoやNISAで資産形成がどんどん身近になる今の時代、保険で資産形成は少しもったいないかなと個人的には思います。
商品はシンプルさが鍵!
保険は本来シンプルなしくみで、他の金融商品にはない特別な役割を果たします。
それは、少ないお金(保険料)を支払うことで、いざという時には大きなお金(保険金)を受け取れる可能性があるという点で、てこの原理とか、レバレッジと言われることもあります。
極端なケースでは、加入直後の不慮の事故や病気の場合、数ヶ月の保険料で、数千万円の保険金が支払われるといったこともあり得ます。
これだけならシンプルなのだけど、保険商品の中には、たくさんの追加機能や、複雑な条件が組み込まれているものが多く、これが「保険は難しい」といわれる大きな理由になっています。
必要な保障額が曖昧なまま、家計に合った保険料で選ぼうとすると、結果的によくわからない選択になってしまいます。
たとえば「定期支払金付積立利率変動型終身保険(通貨固定型)」のような、一気に読めないくらい長い名前のものは、内容も複雑で、手数料も高くなりがちです。
ぱっと見て意味が分からないものは避けて、シンプルで明確な保障内容のものを選ぶと良いですね。
あなたが保険会社の立場なら?
保険を評価する時は、あなた自身が保険商品を設計・販売する側だったら、と想定してみましょう。
たとえば「リスクが高まる高齢者でも加入できる生命保険」を開発する場合、必然的に保険金の支払い確率が高まりますね。
会社としては、前払いでもらっておくとか、条件を多く設定する、保障期間を短くするなどで、赤字にならないように、発生確率と手数料を計算して作るはずです。
結果として、買う側は、その手数料をしっかり支払う確率が高い設計になりますよね。
保険の販売側の立場ではどうでしょう。
たとえば、健康な単身の若者(お金を残すべき責任がまだない場合)や、子育てが終わり、現役時代に資産を築いてきたシニア層であれば、どうしても保険が必要な場面はそう多くなさそうです。
なので、お金を貯めたり、将来のリスクに備えるのに、「保険じゃなくても良い」という選択肢が考えられますね。
保険屋さんは商品を提案しなければ仕事になりませんが、買う側は、どうしても保険のしくみが必要なら買う、保険以外でもできることなら要らない、その判断を「自分で」行うことがとても大事だと思うのです。
まとめ
たしかに、保険には大きな価値がありますが、一見して内容がわからないような複雑な商品には検討の余地はありません。
複雑な部分は、実はたいてい自分で解決できることだからです。
そう考えると、選択肢としてあふれているたくさんの保険商品でも、実際に検討すべきものは限られて、保険選びもぐっと楽になるでしょう。
https://fp-megumi-office.com/2021/10/31/insurance-bad-case/