お金のこと諸々

奨学金で失敗しないために!活用のポイントと注意点

さまざまな生活費が値上がり中、教育費も例外ではなく、家計における学費の負担は年々大きくなっています。

学生の2人に1人は何らかの奨学金を利用している昨今。

今回は、利用者が多い日本学生支援機構(JASSO)の奨学金についてまとめました。

奨学金についてざっくり

奨学金は、親ではなく「学生本人」が借りるお金です。

審査では家族の収入状況が考慮されますが、奨学金を借りて、それを返すのはあくまでも学生自身であることを押さえておきましょう。

奨学金には、卒業後に返還が必要な「貸与型」と、返還不要の「給付型」の2種類があります。

令和4年度、JASSOの奨学金を利用した学生は、貸与型が約113万人、給付型が約34万人でした。

JASSOに限定すると、概ね3人に1人の学生が奨学金を利用していることになります。

令和4年3月に貸与を終えた大学生の平均貸与総額と返還期間は次のとおりです。

タイプ平均貸与額平均返還年数
第一種奨学金216万円14年
第二種奨学金337万円17年
JASSO「奨学金事業への理解を深めていただくために」より

卒業の半年後から返還が始まり、毎月1~2万円を平均で15年程度にわたって支払うことになります。

返還不要の「給付型」奨学金

令和2年4月から「高等教育の修学支援新制度」が始まり、経済的に厳しい世帯を対象に、授業料等の減免と、返還不要の給付奨学金が拡充されました。

支援対象者の要件
  • 住民税非課税世帯及びそれに準ずる世帯の人(世帯年収の目安:約380万円まで)
  • 一定の成績を修めている、または進学先で学ぶ意欲があること

給付型奨学金の支給額

卒業するまで(修業年限の終わりまで)、毎月決められた金額が支給されます。

支給額は、世帯の所得金額、国公立/私立、自宅通学/自宅外通学などによって異なります。

第Ⅰ区分(住民税非課税世帯)の支給月額は次のとおりです。

大学・短期大学 ・専修学校(専門課程)自宅通学自宅外通学
国公立29200円66700円
私立38300円75800円
JASSO「奨学金事業への理解を深めていただくために」より

授業料等の免除・減額

給付奨学金の対象者は、上記の給付金とは別に、入学金と授業料の減額(または免除)を受けることができます。

第Ⅰ区分(住民税非課税世帯)の減免額は次のとおりです。

学校種別国公立
入学金授業料
大学約28万円約54万円
短期大学約17万円約39万円
高等専門学校約8万円約23万円
専修学校約7万円約17万円
学校種別私立
入学金授業料
大学約26万円約70万円
短期大学約25万円約62万円
高等専門学校約13万円約70万円
専修学校約16万円約29万円
JASSO「奨学金事業への理解を深めていただくために」より
  • 毎年10月に、前年の所得をもとに支給額が見直されます。
  • 第Ⅱ区分(年収の目安~約300万円)、第Ⅲ区分(年収の目安~約380万円)の支給月額はJASSOホームページで確認してください。

返還が必要な「貸与型」奨学金

貸与型奨学金の選考は、人物・学力・家計の状況等を総合的に評価して決められます。

貸与型には、無利子で借りられる「第一種奨学金」と、利子がつく「第二種奨学金」の2種類があり、両方利用することも可能です。

貸与型奨学金の支給額

第一種奨学金(無利子)は、学校の種類、国公立/私立、自宅通学/自宅外かによって貸与月額が決められています。

第二種奨学金(利子あり)の貸与月額は、2万円から12万円の範囲で、1万円単位で希望する金額を選ぶことができます。

奨学金タイプ貸与月額
第一種奨学金
無利子
【国公立大】
自宅通学20000~45000円
自宅通学20000~51000円
第一種奨学金
無利子
【私立大】
自宅通学20000~54000円
自宅通学20000~64000円
第二種奨学金
利子あり
2万円~12万円の範囲で希望額を選択

私立短期大学・専修学校は、の支給月額はJASSOホームページで確認してください。

貸与型奨学金の返還方法

奨学金の返還は、卒業後の翌月から数えて7ヶ月目から始まります。

返還方法は次の2種類です。

  1. 定額返還方式
    毎月同じ金額を返済する方法です。
    借りた金額に応じて、毎月の返還額と返還期間が自動的に決まります。
  2. 所得連動返還方式
    前年の課税所得に応じて、返済額が変動します。
    所得が高いと返済額が増え、その分返済期間が短くなりますが、低所得が続くと返済額が減らず、返済期間が長くなることがあります。

第一種奨学金は返還方式を選択することができますが、第二種奨学金は定額返還方式のみとなります。

第一種奨学金第二種奨学金
次のどちらかを選択
① 定額返還方式  
② 所得連動返還方式
定額返還方式のみ

金利について

返還金利は、奨学金を申請する時に、固定金利か変動金利かを選択します。

ですが、実際に適用される金利は、貸与が終了する卒業時に決まります。

返還パターン

毎月の奨学金の返還額や返還年数は、貸与された総額に応じて、最大で20年間の範囲内で決まります。

延滞する前に!返還の救済措置

万が一、何らかの事情で返還できない場合に備えて、セーフティネット(救済制度)も押さえておきましょう。

  • 減額返還制度
    たとえば「毎月15000円の返還が難しい」という場合に、返還額を半分や3分の1に減額できる。ただし、その分返済期間は延びる
  • 返還期限猶予制度
    事情があって返還困難な場合、返済期限を延ばして一定期間返済を停止できる。
  • 死亡・心身障害による返還免除制度

ちなみに、延滞が続くと次のようなペナルティがあります。

  • 期日までに返還されない場合
    年3%の延滞金が加算される。
  • 延滞3ヶ月目以降
    個人信用情報機関に登録(ブラックリスト入り)
  • 延滞4ヶ月目以降
    保証人への督促、返還期限が来ていない分も含めた一括返還を求められる、給与差し押さえなど

信用が損なわれると、クレジットカードや住宅ローンが利用できなくなる可能性も出てきますので、返還が難しくなりそうな時は放置せずに、必ずJASSOに相談しましょう。

卒業後に、就職先の企業が従業員の奨学金を一部(または全額)肩代わりする「代理返還」を行っているケースもあります。

令和6年5月末時点で、全国で2,023社がこの制度を利用しており、就職先を選ぶ際の一つのポイントになるかもしれませんね。

奨学金の使い方について

奨学金の使い方は個人の自由ですが、次のように使われることが多いです。

  • 入学金
  • 授業料・施設設備費
  • 生活費
  • 教科書代
  • 通学費
  • サークル活動費
  • 資格取得費

奨学金の支給時期と費用の支払い時期のズレには注意が必要です。

たとえば、大学に合格すると、手続き時に入学金の支払いが必要になります。(入学時よりも前です)

一般的に20万~30万円くらいですが、医療系学部では100万円を超えることもあります。

推薦や総合型選抜などで早めに進路が決まった場合、前年度(高3)の10月~11月には入学金の支払わなければなりません。

入学後に支給が始まる奨学金では間に合わなくなりますので、あらかじめ用意しておく必要がありますね。

どうしても間に合わない場合は、奨学金とは別に「教育ローン」を利用する手もありますが、教育費は大きくかかる時期がある程度想定できますので、前もって少しずつ用意しておく方が断然スムーズです。

民間や自治体等の奨学金

JASSO以外に、民間企業や団体、地方自治体なども奨学金を提供しています。

細かい条件は異なりますが、返還不要の給付型は総じて希望者が多く、狭き門であることは心しておきましょう。

奨学金の応募方法には、ガクシーなどの奨学金情報サイトで調べて直接応募するケースと、学校を通して申し込むケースがあります。

奨学金情報サイト:ガクシー

学校からの案内はスルーせずに、しっかりチェックしておきましょう。

また、複数の奨学金を同時に受け取ることができない場合もありますので、応募前にしっかり確認しておきましょう。

まとめ

長期にわたる奨学金の返還は、就職後の生活にも影響を及ぼします。

子どもが生まれたら少しずつ準備しておくのがベターですが、貸与型奨学金を利用する場合は、返還額や年数など「返す時」のイメージをしっかり持って検討しましょう。