2:公的制度・税金

R5年度の年金額改定|3年ぶりマクロ経済スライドとは

2022年は、生活に必要なものほぼすべてが値上がりして、物価急上昇を目の当たりにした1年でしたね。

総務省から消費者物価指数が公表され、物価は前年と比べて4%も上昇しました。

これに伴い、2023年度の年金額も発表され、3年ぶりに「マクロ経済スライド」という調整が行われることになりました。

年金額は、物価と賃金の変動に応じて毎年見直されます。

マクロ経済スライドは、今の現役世代が将来受け取る年金にも関係することですので、是非そのしくみを知っておきましょう。

令和5年度の年金額

2023年(令和5年)4月から、シニアの皆さまが受け取る年金額は、前年から2%前後の引き上げとなりました。

物価と賃金の変動率から、「マクロ経済スライド調整率」が差し引かれたもので、令和5年6月の受取り分から適用されます。

国民年金保険料について

現役世代が支払う保険料(国民年金保険料)は、平成16年から毎年少しずつ引き上げられてきましたが、平成29年度に上限(16,900円)に達し、引き上げが完了しました。

その上で、平成31年から自営業の方などに対しても産前産後の保険料免除制度が導入されたため、その分保険料が月額100円引き上がり、17,000円となりました。

実際の保険料は、賃金の変動に応じて毎年改定され、令和5年度は月額16,520円となります。

出所:厚労省「令和5年度の年金額改定について」

マクロ経済スライドとは

国の年金制度は、物価が上がったら、年金額もそれに応じて上昇するしくみになっています。

年金で暮らしている人が、うんと長生きをしたら「物価が上がって生活できない」とならないように、その時の物価や賃金上昇に合わせて、年金額自体を変動させるしくみです。

国の年金は、現役世代が支払う保険料で、高齢者に給付する年金をまかなう、子世代から親世代への仕送り方式です。(自分で貯めて自分で受け取る積立方式ではありません)

運営する側(国)としては、「収入(現役世代からの保険料)= 支出(高齢者への給付)」となっていることが望ましいのですが、少子高齢化で将来バランスが崩れてしまうおそれがあるため、給付額を少し抑える調整を行うことになりました。

これがマクロ経済スライドです。

出所:厚労省「いっしょに検証!公的年金」

スライド調整率の決まり方

年金制度の支え手である現役世代の賃金が物価ほど上がらない場合は、賃金変動に合わせて、年金の給付額も改定されます。

  1. 現役世代(公的年金に加入している人)の変動と、平均余命の伸びに基づいてスライド調整率を設定する。
  2. 賃金と物価の変動がプラスであれば(景気が良い時)、改定率から①のスライド調整率を差し引く。

スライド調整率 = 働く人の変動率(過去3年分の平均)+ 平均余命の伸び率(定率で0.3%

マクロ経済スライド未調整分

現役世代の負担能力を重視するとはいえ、現在の高齢世代にも配慮が必要ということで、「前年よりも年金額を下げない」ルールがあります。

そのため、マクロ経済スライドを実施すると年金額が前年を下回ってしまい調整しきれない場合は、未調整分を繰り越すことになります。

翌年度以降で、マクロ経済スライドを実施する時に(次の景気回復時)、それまでの未調整分も合わせて差し引かれます。

令和5年度は、今回分(0.3%)と、過去2回の未調整分(0.3%)が併せて引かれるので、計0.6%のマイナスとなり、目減りが大きくなっているんですね。

年金額の改定ルール

年金額を決めるための、令和5年度の変動率は以下のとおり。

賃金変動率:2.8%
物価変動率:2.5%
マクロ経済スライド調整率:▲0.3%
過去の未調整分:▲0.3%

受け取る年金額は、賃金変動率が物価変動率を上回る場合、以下のように決まります。

令和5年度の年金額の改定率は、新規裁定者(67歳以下の方)は2.2%、既裁定者(68歳以上の方)は1.9%となります。

マクロ経済スライドは、年金受給者が生活し、モノを買ったりすること(購買力)を維持する仕組みです。

国の年金は、将来のインフレを考慮して設計されているとはいえ、マクロ経済スライド調整率が機能している限り、物価に追いつくことができません

導入当初は、2023年度までに終了する予定だった制度ですが、調整見送りの影響で、引き下げはこの先も当分続く見通しです。

ただ、ネガティブになり過ぎずに、年金を受け取るのが数十年先の現役世代は、調整率に負けない程度、自助努力で資産形成をすることが大事です。

マクロ経済スライドの仕組みを知ると、年金が目減りすることの意味がより具体的になります。

国からの「だから自助努力で貯めてね、NISAやiDeCoもあるよ」というメッセージにもつながりますね。